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第八章 正確性とその習得方法について(その1)

これまでの章において、私はクラブヘッドを必要充分な力強さとともに、より速く、またより正確に振り抜くことが可能であり、そしてそれは他のいかなる方法よりも「スイング」の手法を通じて行われることが効果的であるとの主張を行ってきた。これまではその速さの側面に多くの説明を割いてきた。よってここでは、クラブヘッドが理想的な角度でボールにコンタクトをしていく際の、フェースによってもたらされる正確性について言及をしていきたい。

比較のために、ここでは回転運動を行っているコマの頂上部をイメージしていただきたい。ここでは水平なプレーンで発生している回転運動が、コマの頂上部を重力に対抗させて真っ直ぐな状態に保っているのであり、その状態は回転力が引力に対抗できるだけのフォースをもたらしている間続き、やがてそのフォースが尽きるとコマは倒れる。よって回転のチカラが強いほど、その回転運動の軌道も安定したものとなる。回転の速度が下がり、ある一定の速度を下回る時点からコマの挙動は不安定なものとなり、やがて倒れる。

見た目で判断ができるかどうかに関係なく、スイングのアクションの性格も、このコマの場合と全く同様である。従い、クラブヘッドをスイングする際に、より大きな速度が得られるほど、スイングされている物体の運動軌道もまたより性格で安定性の高いものとなる。しかしそのスピードに関わらず、スイングのアクションにおいてクラブヘッドは、何度でも事実上同じ軌道で動かされていることが必要となる。言い換えれば、クラブを正確性を伴って振ると言うことに再現性を求めることは、真の「スイング」のアクションにおける、安定した、スムースなパワーの活用によってのみ達成が可能なことであるのだ。

ここで求められている正確性というものがどういうものであるのかを確認しておきたい。両手が置かれているクラブのグリップエンドから、およそ36インチから40インチほど離れたクラブヘッドがあり、そのヘッドを注意深く前方に動かしていく過程でボールを打撃して目標とするラインにボールを打ち出していくという状況である。もしこのボールが200ヤード先を目標としているのであれば、打ち出し方向の1°の誤差は、目標地点では10フィートほどの誤差となるが、現実には3°から5°程度の誤差というものは、意図して行う打撃の方向性の制御においては、極めて現実的に発生しうる誤差の範囲ということになる。従い控えめに言って、正確に望んだ方向にボールを打ち出していく事はそもそも至難の業なのである。

野球のピッチャーが持っているボールを投げ出すときに、上記のような詳細なイメージを持っていることでコントロールを得ているとしても、ゴルフにおいてはそのような方法でピッチャー以上の正確性やコントロールを獲得することは難しい。ピッチャーは日頃の鍛錬によって、筋肉の運動のルーチンを発達させることでコントロールを獲得しているが、それは上記のような意識的な思考を伴わず、本能的にボールを投げ出す事ができるようになるまでに鍛錬を行った結果である。この域に達すれば、彼の筋肉のルーチンが通常運転のなかで対応可能な範囲の速度内においては、正確性を伴ってボールを投げられるということになる。しかしもし彼がそれ以上の速度を求めるとなれば、コントロールを達成するのに大きな困難が発生するはずである。

この状況はゴルファーに対してもまったく同じように当てはまる。ひとたび彼がスイングにおける筋肉のルーチンを獲得したならば、彼は何度でもクラブを同じように正確性を伴って振る事ができるのであり、同時にそこで発生させることが可能な最大限のパワーを投入した速度を達成することも可能なのである。しかしプレーを重ねるにつれ、彼が本来制御可能なパワーを超えるものを投入したいという衝動に駆られた瞬間、それまでの正確性は消え去ってしまうのである。ここで彼はそれまで以上にハードな肉体的トレーニングを積むかもしれないが、そうして得られたパワーは多くの場合正しく活用されることができない。つまり、ここで言うパワーとは中心から放射状に向かうものではないのだ。テコの構造によってではない、真のスイングの場合においては常に、他の何かの活用が必要となるのである。

もし野球のピッチャーが自分のコントロールに不安を感じ始めたならば、ボールの握り方を変えたり、よりハードに投げ込む事によってそのコントロールを取り戻そうとはしないはずである。むしろ、彼が投球において本来行っていた動作に立ち戻ろうとするはずである。それはその方が他の方法よりも再びコントロールを保った状態に戻れる可能性が高いことを知っているからである。ここでも、これはゴルファーにとっても同じ事が言える。

クラブフェースでスクエアにボールを打撃できる状態に立ち戻るための、安全かつ信頼性の高い方法は、以下の三つのことを再確認するのみである。一つ、クラブが正しくグリップされているかを確認すること、二つ、目標に沿った方向にボールを打ち出すための、正しいボールとの関係性を確保したアドレスができているかを確認すること、三つ、スムースかつ束縛のないスイングを行うことである。もしプレイヤーがクラブを正しくグリップし、正しいポジションに立ち、本来のスイングを行ったならば、ボールは必ず意図した方向、あるいは極めてそれに近い方向に飛んでいくはずである。方向性の制御を決定づけるポイントは上記の三つである。ショットが意図しないものであった場合は、ストロークにおいて上記の内の一つ、あるいは二つ、全てが欠如していなかったかを確認する事で検証が可能になるのである。

読者諸君にはこれまでのパラグラフの内容について熟考されることをお勧めしたい。とりわけ、ゴルファーがよいプレーをするためには「クラブヘッドをスイングする以上のことをする必要がある」という主張についてである。こうした主張は、高名なプレイヤーの外見上の違いに注目することから発生するものであり、これまでに述べたとおり、そうした人物が全ての上級者のスイングに共通している本質的な原則面を完全に見失い、非本質的なものに囚われていることを表しているものでしかないのである。

 

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