サイトアイコン 大庭可南太の「ゴルフをする機械」におれはなる!

中井学氏のUUUM退所動画に思うこと

さぁ今年からはガンガン翻訳を進めていこうと気合いを入れておりましたところに、こんな香ばしい話題が入ってきましたので、なんとなくこの界隈の事情を知るものといたしまして所感をまとめておかねばと思った次第です。

ニュースメディアでもこの件を取り上げているところがありましたので、結構話題になっていた模様です。またこの件に対してUUUM社がプレスリリースで「法的措置も検討」としておりますので穏やかではありません。

ただ私自身初めてこの動画見たときの印象が違和感しかありませんでしたので、今回もう一度よーく見て内容を確認してみました。

1:08 本当に円満なら退所はしない
1:20 苦しい三年間だった。
2:05 学生時代「ガキがゴルフなんてやるな」と言われたトラウマがあった
2:45 若い人にもゴルフの楽しさを知ってもらいたいという思いでYouTubeを始めようと思った時にUUUMに声をかけられた
3:18 「相当の赤字をつくってチャンネルを立ち上げた。5年くらいで黒字に出来れば」という話だった
3:31 中井学氏は固定給をもらっていた。ギャラはチャンネル登録者や視聴数と連動したものではなかった
3:55 相当の赤字でもチャンネルを作ろうというUUUM側の心意気に感じて突っ走ってきた
4:26 チャンネルは順調に成長し、当初5年かかると思われた投資の回収を2年で行う事が出来た
4:43 UUUMゴルフが黒字になったことを、三年目のあるときに外部からの情報で知った
5:05 UUUMゴルフ黒字化の中井氏の貢献度についてUUUM側に質問した
5:17 その当時の年間動画UP数、260本、再生数6,500万という数字にどのような意味があるかわからなかった
5:37 UUUM側の中井氏への評価は「一番多く出てる人なんだからあたりまえでしょ」と言われた(意味不明)
5:50 動画の企画にも関わっていた
6:12 これだけがんばったのに何なんだろうと感じた
6:28 会う人からは「中井さん、UUUMゴルフすごいですね。儲かってますねー」と言われた
6:36 同業者からは「もうギャラは5,000万?一億?」と言われた
6:45 実際にはその20分の1とか30分の1なんだけどなぁと思った
6:55 金銭的にも報われず、感謝もされない、またそれらについて交渉も出来ない空気があった
7:18 中井氏はUUUMと専属マネジメント契約を結んでいた
7:26 マネージャーは三年間ついたことがない
7:40 UUUMから来た案件はそおそらくイベント1〜2件しかない
8:15 UUUMと契約を結ぶ段階で、既に契約していた用具メーカーからの契約金の一部をUUUMによこせと言われた
8:40 マネージャーも付ける余裕はないと言われた
8:55 中井氏側が難色を示すと、アドセンスと案件動画に関する収入については一切拒否することと言われた
9:10 当時はUUUMが赤字と聞いていたので、それを受け入れたが、結果年収減となった
9:30 これはフェアではないと感じた
9:40 ユーチューバーをやっていたらどんどん儲かると思われがちだが、実際には三年間で年収は減っていった
10:10 UUUMからの固定給はあったが、UUUMを敵対視するメディアからの仕事が減った
10:50 「クリエイターを大事に」というのは欺瞞ではないか
11:28 UUUMの動画も次第に案件動画ばかりになっていってやりたいレッスンもできなくなった
12:20 そうした経緯を経て、UUUMを離れて自分のチャンネルを立ち上げる方が健全と考えるようになった
13:00 UUUMでもこれまで通り中井氏の動画が流れるが、これからの自分のチャンネルのほうがゴルフにかける思いは強い
13:38 本来は飛ぶ鳥あとを濁さずの通り、こんなことをしたかったわけではない
14:10 ゴルフ界のためになる動画をたくさん作っていきたい
14:26 「勇気をください」(意味不明)
14:37 これからどうなるかわからないので怖いです
14:53 本当はまだ言いたいことがあるが、あまり後ろ向きになりたくない(充分後ろ向きだが)
15:15 グチはこの動画を最後に、これからは面白い動画を作っていきたい

私、大庭可南太の個人的な感想ですが、

え!?別にUUUMが何か約束破ったわけじゃなくね?

って思っちゃうんですが、どうも「UUUMひでーなー」とか「YouTube業界の闇だなー」みたいな論調が多くてちょっと違和感を感じましたので、思うところを書いておきます。

YouTubeとは何か

まぁあえて私が説明するまでもないのですけど、動画配信サイトですよね。ただここ数年でネットの通信環境がよくなったり、老人がガラケーを新規購入できなくなってスマホ使い出したり、コロナで引きこもり需要が増えたりとかで、一応市場としては伸びているわけです。去年記事にしましたけど、スポーツ中継だってやろうと思えば出来るわけで、まだまだメディアとしての可能性は未知数と言えます。

ただ今現状では、大がかりな撮影機材のない個人でも動画コンテンツが作れることが画期的なわけで、例えば以下の動画などは本当に「ただたこ焼きをつくるだけ」の動画ですが

これで600万再生とかにしてしまうバケモノもいるわけです。つまりこういう誰でも作れそうな、日常的な風景を人気コンテンツに出来る才能というものも存在するわけです。今現在活躍しているYouTuberも、その多くは「新作ゲームをプレイしてみた」とか「喰ってみた」とか「歌ってみた」とか、誰でもやろうと思えば出来ることを個人で勝手にやってみて撮影して編集して動画にした系が多いわけです。

だもんでそこそこ知名度のある芸人などが、吉本興業やめて自分でYouTubeやって生きていけるじゃんみたいになるのもまぁ当然と言えば当然です。ほとんど元手や中間コストがかかってないわけですから。

ちなみに経済規模としては、おおよそ再生1回あたり0.5円くらいが広告収入になるもようです。また人気YouTuberになると、企業とのタイアップなどからも収入が発生します。つまり上の動画のお兄さんで言えば、これ一つで300万円くらい稼げてしまった可能性があります。そりゃ一日中タコ焼くわけです。

UUUMとは何か

で、今回問題になっている、中井学氏が所属していたUUUMとはどういう会社かと言いますと、こういうYouTuberの生きの良いヤツを見つけては、マネジメント契約を行うという会社です。簡単に言えば

・YouTuberは動画収益の20%をUUUMに支払う。

UUUMはその対価として以下のようなサービスを行う。

・専属マネージャーをつけ、動画の企画協力や、クリエイターのスケジュール管理など行う

・企業タイアップ、イベント、グッズ発売など、クリエイターの収入増につながる案件を創造する

・税務関係、コメント欄の炎上や誹謗中傷などに対しての法的措置などコンプラ系のサポート

まぁ他にもあるんでしょうけど、早い話が

「こちらのお店とっても評判良いですね。うちからおしぼり買って頂くともっと儲かりますよ」みたいのとあんまり変わりません。

とはいえUUUMはこうしたマネジメントを業務として行うということにかけては老舗でしたし、現在は上場も果たしているので、なんとなく「UUUMと契約しているクリエイターは一流」みたいなブランドイメージがある(あるいはあった)ことは事実です。

「UUUMゴルフ」とは何か

では、「UUUMゴルフ」というチャンネルでは何をやっているかと言うと、

・なみきちゃん(UUUM社員らしい)というMCを中心に

・としみん(元レースクイーン)や三枝こころさん(ファッションモデル)などの女性タレントと

・中井学さん、芹沢さんなどのレッスンプロや

・プロゴルファーや芸能人などをゲストとして

ラウンドや練習風景、あるいは上達のためのヒントになるような動画をお届けする、ゴルフバラエティ番組ということになります。

この時点で、YouTubeコンテンツとしては既に特殊な部類に入ることがわかります。

どう考えても元手がとてもかかるわけです。プロ呼べば1日5万〜30万くらいはかかるでしょうし、タレントなんてもっとでしょうし、プレー代も交通費も、撮影スタッフや編集スタッフ、なみきちゃんの人件費もかかるわけです。

これは推測になりますが、UUUMとしても売れてるYouTuberからみかじめ料を取るだけのマネジメント収入というビジネスモデルだけでは将来的に不安もあり、実験的に自社でこうしたコンテンツを作っていくということを始めてみたのが「UUUMゴルフ」だったのではないかと思います。

メインMCのゴルフ未経験者のなみきちゃんがどのように上達していくかというのが中心となるストーリーでしたし、そこでの技術指導を行うプロとして、メインに指導を行うレッスンプロとして選ばれたのが中井学さんだったということだと思います。

つまりUUUM側としては、中井学氏を「番組の出演者」と考えており、「年に100回くらいは呼ぶから一日5万として年間500万くらいでやってよ」という話を、「専属マネジメント契約」とかいう言葉でかっこよくしてしまったために、さも中井学氏がYouTubeクリエイターとして活動しているという誤解がご本人およびその周辺に発生してしまったということが問題の発端になっているのではないかと思います。

上記の通り、一般的なUUUM社のマネジメント契約というのは、クリエイター側が収益の一部をUUUM社に支払うという形態であり、一般的な芸能事務所とは異なります。スポーツ選手のマネジメント契約と近い形だと思うのですが、どうしてこういう勘違いが起きてしまったのでしょうね。

なので私個人としては、

・ギャラが一般YouTuberと比較して安い

・YouTubeチャンネルが順調に成長したのにギャラが増えない

・マネージャーが付かない

のは当たり前だと思いますし、なんなら「PINGの案件も取ってきてよ」くらいのことを言われるのもしょうがないのではと思います。

なので本質的には、「新卒で営業初めて三年で1億売り上げ達成したのになんで俺の年収500万円なんすか」と感じた意識高い系の社員がイキって転職したあとに前職の悪口言ってるのと大差ありません。

動画コンテンツとしての評価

で、中井氏の言う、「UUUMゴルフは大成功している」という主張が本当なのかどうか、一応ツール使って調べてみたのですが、ソースはこのサイトです。

確かにチャンネル登録者数は増えているのですが、実は2019年の8月に月間1000万再生になってから、変動はありますがそれほどチャンネルの再生数は伸びてないことがわかります。そもそもUUUMゴルフのチャンネル登録をするのは、単なるなみきちゃんのファンとかもいるでしょうし、視聴目的がそれぞれいろいろあっての60万人だと思うのですよ。

2020年は1億6千万回の再生なので、おおよそ広告収入が8千万円、あとは登録者数をアピールすることで案件は取りやすくなっていると思いますが、動画一本60万円として年間50本くらいが限界ではないですかね。でないと案件動画比率が高くなりすぎますし。

とするとこのプロジェクト全体では年間売り上げが一億ちょっとだとして、後は演者の出演料やゴルフ場ロケにかかる費用がどうなるのかですが(まぁおおよそ概算はできますが)、社員だってなみきちゃん含め3人〜5人くらいは割いているでしょうし、黒字ではあるのでしょうけど、正直このプロジェクトが成功しているかというと「う〜む」となってしまうところではないかと思います。

私がこのチャンネルの責任者なら、動画クリエイターのマネジメントを行う会社でありながら

・自社制作のコンテンツがそれほど伸びているわけではない

・UUUM社としてはなんら中井氏に対して契約違反を犯しているわけでもないのに、中井氏からはなんかいちゃもんをつけられ会社としてのブランドイメージが少なからず毀損し

・当該チャンネルのチャンネル登録者数も減少している

という難局にどのように立ち向かっていくのか、かなり必死に知恵を絞らなければならない状況になっていると思います。

中井氏に望むこと

ともあれ、冒頭の中井氏の動画は今現在再生50万回に迫るイキオイですし、新しいチャンネルの登録者も10万人を超えていますので、中井氏としてはリベンジしてやったりという気分なのかもしれません。何リベンジなのかよくわかりませんが。

まぁ社会人としてどうなのとは思いますが、ことYouTubeという業界においては未だ戦国時代の輸送を呈しておりますので、流言を流そうが裏切ろうが主君の寝首をかこうが、何でもアリということでよろしいのではないでしょうか。

ただせっかくですので、ありきたりのレッスン動画を量産するのではなくて、エッジの効いたYouTubeならではのブラックな動画を沢山つくっていただけますと幸いです。もう見た目もキングボンビーのメイクとかしていただいて、こんな感じのサムネでお願いしたいです。

というわけで現場からは以上です。

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