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第13章 ゴルフにおいて筋肉はどのように機能しているのか(その2)

SPSはダラダラやっていきますが、それ以上にダラダラしているゴルフィングマシーン解説のYouTubeの方も見てくださいね!

クラブヘッドにパワーを供給する

既に我々は第七章にて、両脚、両ヒップの筋肉によって作られたエネルギーが、クラブヘッドにどのように伝達されるのかについての、広範な原則群の議論を行ってきた。同一軸上に積み重ねられたシリンダー構造について考えてみることで、我々は最も効率的なエネルギーの伝達は、一番下層のシリンダーから緩みのないシーケンスを伴って上方及び外側に向かってこの構造物を動かしていく際に最適化されることを確認した。

全米オープン開幕しましてすっかり寝不足です。われらが松山英樹選手(C)ALBAそしてデシャンボー(C)ALBAが共に予選を通過しましたが、最も嬉しかったのがI’m crap at captions, so just enjoy this birdie on 7 today! Even par and looking forward to the weekend on the links #pebble #7 #usopen pic.twitter.com/M1T59iQOtm— Luke Donald (@LukeDonald) June 15, 2019ルーク師匠が久々のメジャー予選通過を果たしました。米国の地区予選を勝ち上がっての出場でした。復調してきました。頑張って上位を目指して欲しいものです。 こ...
第七章 ボディ全体をモデルのパターンにフィットさせるということ(その2) - 大庭可南太の「ゴルフをする機械」におれはなる!

ここで確認した原則をそっくりそのまま人体のゴルファーに置き換えてみることにする。図7:5にあるシリンダーAをゴルファーの太もも、またシリンダーBを両ヒップ及び体幹、シリンダーCを両肩と置き換えてみる。あるいはさらに多くのシリンダーがゴルファーの人体には存在するのかも知れないが、こうした考えが建設的かどうかは議論の分かれるところである。シリンダーAを動かすために筋肉群X,Y,Zを、次にシリンダーBを動かすために筋肉群P,Q,Rを動かし、さらにといった考え方は、これら筋肉群がどんなものであるかが科学的に突き止められているとは言え、おそらく確実にそのプレイヤーのゴルフに明確な害を及ぼすと思われる。こうした考え方は最終的には、スティーブン・ポッター(訳者注:英国の作家。スポーツマンシップの対義語である、いかにルールに抵触しない範囲で相手に対して優位に立つかを説いた「ゲームズマンシップ」の著者)が「これは見ないで、切り取ってライバルに見せること」というラベルを貼るようなゴルフのイラストのようなものになってしまう。

モデルの原則を引き継ぐ上でゴルファーにとって重要であるのは、直下のシリンダーが充分に稼働して、飛距離を稼ぐ機能をすぐ上のシリンダーにシーケンスとして引き継ぐまで、回転動作を通じて対象となるボディの部位が引っ張られていると感じることにある。

このようにすることで、我々がエネルギーを効率的に伝達する事が出来るだけではなく、大きな筋肉群がその容量のほぼ最大限のパワーを発生させることを確実にするという点で注目に値するのである。これは既に述べた、これら大きな筋肉群は大きい負荷にさらされたときに最も使用効率が高くなるという事実を直接的に裏付けるものでもある。運動の初期にタイトなシーケンスで稼働することによって、太ももの筋肉は実質的にシステム全体を動かさなければならないのである。

この議論をさらに推し進めることによって、我々はある重要かつ実用的な結論に達する事ができる。両脚および両ヒップの大きな筋肉群への負荷は、それらを使用して上部のボディ部位が後方へ動くことを阻止するように使用した場合に最も効率的となる。ゴルフ的な表現をすれば、クラブのバックスイングが完了する前に、ヒップによるフォワードスイングを開始するということである。このことはこれら大きな筋肉群に、より大きな負荷を掛けられることに加えて、トップオブザバックスイングにおいて、システム全体が同時に停止した場合にしばしば発生しがちな「緩み」の発生を阻止することにも寄与する。

実際に全ての上級者は、ほんの0.1秒ほどではあるが、クラブヘッドがバックスイングのピークに達する前に、ヒップが前方へ移動し始める。本章のブルース・デブリンおよびニール・コールズ、また第11章のベン・ホーガンのスイングの連続写真を見れば、「クラブヘッドよりも前にヒップが動き始める」効果が明らかに見て取れる。実際に、この状態が起きることを可能にすることは、バックスイングの二つの主要な目的の一つであると言ってよく、もう一つの目的とは第五章で触れたようにスイングのプレーンに送り込む狙いをつけるということである。

 

13:1 ブルース・デブリンとニール・コールズのトップオブザバックスイング付近の連続写真。バックスイングの頂点に達する前にヒップが前方に動き始めていることがわかる。この動作により、フォワードスイングに向かう筋肉群のテンションが可能な限り引き締められ、また両脚の大きな筋肉に追加で負荷をかけることで、最大限に効率的に稼働させることを可能にしている。

ここで全ての読者諸君が、容易にバックスイングの二つの目的を感じ取れるようにするための実験がある。ドライバー(あるいはスプーンやロングアイアンでも構わないが)で以下の方法でボールを打ってみてほしい。

  1. 普通のバックスイングでスイングする。
  2. バックスイング動作をしない。つまり通常のバックスイングのトップの位置でクラブを静止させ、そこからダウンスイングを行う。
  3. 2と近いが、トップの位置に達する12cm程度手前に静止し、12cm程度のバックスイングを行ってからダウンスイングを開始する。

実際にこれを行ってみると、通常のスイングにくらべて、2および3の方法では打撃の正確性が落ちるはずで、つまりこのことが正常なバックスイングにおいて「狙いをつける」機能が存在していることの証明となる。しかしある程度慣れてきてミスヒットの回数を減らせたとした場合、その際のベストショットの飛距離に着目すると、2の方法ではかなり飛距離が落ちているはずであるのに対して、3の方法では通常のスイングとほぼ変わらない飛距離を確保できることに気づく。この理由は簡単で、ほんの阿須かでもバックスイングを行うことで、ヒップがクラブヘッドに先駆けて動き始めるのに充分な時間が確保できることで、本章で述べている効果が発揮されるからである。

同時にこの実験はもう一つの観点からも非常に教育的意義の高いものとなる。2の方法を使用した際、多くの方がダウンスイングを行う際に「緩み」を感じるはずである。

バックスイングにおいてエネルギーを蓄積する

既に、我々ゴルファーはスプリングのようにねじり上げることでパワーを作り出しているわけではないことを述べた。つまりダウンスイングに必要なエネルギーは、バックスイングによって蓄積されたものが「全て」なわけではない。しかしその一方で、以下の二つの方法によってわずかではあるがバックスイングによって蓄積されるエネルギーがある。

一つは重力への抵抗である。例えばオノを振り上げれば、その人はオノを振り下ろすのに必要なエネルギーを蓄積したと言える(疑問に思うのであれば、オノを振りあげることで上空にあるものを叩こうとしてみることだ)。ゴルフスイングも同様で、ゴルファーはクラブヘッドを振り上げるだけではなく、同時に両腕や両手を振り上げている。そしてそれらの重量は全てインパクトに向けたフォワードスイングに必要なエネルギーを補佐することに使用されている。

しかしこの重力を使用した重量をエネルギーに転換する方法は、スムースで効率的な順番で行われるゴルフスイングにおいて疑いなく一定の役割を果たしているとは言え、ダウンスイングに必要な全体の34馬力のエネルギーにおいて、ほんのわずかな割合としてしか貢献していない。実際に現実的な体重および身長のゴルファーが、この2レバーモデルを使用してこの重力のみをエネルギー源として「スイング」を行った場合、1215m/s程度のボール初速しか得られず、これはやっとドライバーで地面からボールを打ち出せるというくらいのものでしかない。

今ひとつの方法は、骨と筋肉をつないでいる「腱」の弾力性が伸ばされることによって蓄積されるエネルギーである。これは確かに存在し、筋肉の活発な収縮によって生み出されるパワーにエネルギーを付与するものではあるが、その総量は極めて少ない。よって現実的には、筋肉の収縮時におけるテンションの保持に役立っているという程度以上の意義をなさず、バックスイング中におけるエネルギーの蓄積への貢献として認めることは難しい。

 

ヒップの水平方向への動作

もしクラブが垂直な軸でスイングされるならば、モデルのハブにドライビングパワーを発生させるのに必要な筋肉の動作の一般的なパターンに対して言及するべきことはほとんどない。しかし実際には軸は傾いているのであり、水平な軸を伴うローテーションによって作り出されるどんな動作も、同様に効能をもたらす可能性がある。

13:2 どちらも「両手」のフォワードスイングだが、ここにはどのようなローテーションの違いがあるだろうか。読者諸君は、垂直な軸を伴う動作が上体のローテーションであり、水平な軸を伴う動作がヒップの水平方向への押し込みであることが理解できるはずだ。二つ目の動作を人体に置き換えると13:3のイラストとなる。

13:3のイラストは、そうした動作の一例であり、両脚から発生しているエネルギーを大きなパワーに転換している。トップ付近で早期に目標方向へヒップをスライドさせて軸を傾けることにより(また重要なポイントとして、ハブの水平方向への移動を一切発生させずに)システムにおける全ての上半身の筋肉群が、水平軸の一つのユニットとして回転している。同時に13:3のイラストでは、この結果として頭部がダウンスイング中に後方および下方に移動しているが、これは上級者の多くに見られる動きである。この「縦」の回転動作と、垂直軸を伴うヒップをねじり上げない「横」の回転動作のコンビネーションによって、上半身のハブを「傾いた」軸を伴う力強い回転動作に転換することが可能となり、これがダウンスイング中における理想的な動作と考えられる。

13:3 ヒップによるパワー。ダウンスイングの初期に、ヒップを背中側および目標方向側へ押し込むことで、上体の筋肉群のテンションの開放を一切伴わずに上体をローテーションさせている。両肩、両腕、クラブヘッドの相対的な位置関係はほぼ変わらないままである。

従いヒップの動作は単純なローテーションでも、単純な水平移動でもなく、その組合せである。コレは実際に非常に強力な動作であるが、少しでもボールを遠くに飛ばしたいと熱望するゴルファーにとっては正しくかつ完全に遂行されなければならない事象である。

もしロングドライブの「秘訣」があるとするならば、これが秘訣である。

 

まぁ、現代ゴルフではヒップスライドはかなり消極的ですがね。SPSは完全な「スイング」の研究本ですから上半身はホリゾンタルヒンジングなんですね。

まぁスイングとヒッティングについてはこちらの本も参考になりますよー

さて、このたび当ブログにて「スインガー最強メソッド」として記事を投稿しておりました、アーネスト・ジョーンズ著「Swing The Clubhead Method」の邦訳版を、「スインガーの流儀」として出版させていただく運びとなりました。今回はB6版で、実用書サイズです。ページ数は200ページになりました。今回は特にオリジナルの装丁にこだわる必要もありませんでしたので、縦書きで構成しました。また著者のアーネスト・ジョーンズについて調べれば調べるほどスゴい人でしたので、付録で年譜も付けました。ちなみに目次はこんな感じです。手...
「スインガーの流儀」を刊行しました! - 大庭可南太の「ゴルフをする機械」におれはなる!
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