サイトアイコン 大庭可南太の「ゴルフをする機械」におれはなる!

第七章 ボディ全体をモデルのパターンにフィットさせるということ(その2)

全米オープン開幕しましてすっかり寝不足です。われらが松山英樹選手

(C)ALBA

そしてデシャンボー

(C)ALBA

が共に予選を通過しましたが、最も嬉しかったのが

ルーク師匠が久々のメジャー予選通過を果たしました。米国の地区予選を勝ち上がっての出場でした。復調してきました。頑張って上位を目指して欲しいものです。

 

ここんとこ「ゴルフは生中継」をずっと推して来ましたが、本日の女子ゴルフは残苑ながら地上波での放送開始とともに雨天中止になってしまいました。わかったことはつくづく宮里藍さんが賢いということで、やはり選手として、一人の人間として成長するということの重みを感じたりしました。いやまだ若い選手はいいと思うんですよ「タピオカみるくてぃーまいうー」みたいな感じでも。でも勝負を重ねていくうちにやはり人間としても成長を余儀なくされるのではないかと思ったりしました。

では一向に盛り上がりを見せないSPSの続きになります。

 

ゴルファーのフォワードスイングにおける「シーケンス」

 これまでに見てきた事実がゴルフのスイングに指し示す事とはなんであろうか。

 最初に明らかなことは、もしゴルファーがそのダウンスイングの初期にその手首のアンコックを行ってしまったならば、最終的にボールに達する際のクラブヘッドのスピードを劇的に低下させると言うことである。これはほぼ完全なミスショットと同義である。ゴルファーが手首をアンコックさせるために活用できるいかなるパワーも、アンコックがそのスイングに調和した形で自然に行なわれるように努力することに向けられなければならないのである。

 左腕一本でスイングを行うゴルファーは、コックおよびアンコックの動作も左手首のみで行なわなければならないため、ヒンジを行うパワーも非常に少ない。よって彼らはスイングの全体を通じてその手首にアンコックが発生しないように意識しなければならず、その動作のタイミングは結果として、最も効果的な結果をもたらす段階において自然にアンコックが行なわれることとなるのである。リードおよびウィルモットのアクションのシーケンスを見返していくほど(5:1)、彼らの動作がまさしくこのように行なわれていることが理解できるはずだ。

 ダウンスイングにおける動作のシーケンスは、バックスイングにおけるそれよりも遥かにシンプルなものであり、例えばクラブの始動時、両手はクラブヘッドをハブのターンの後方に置き去りにしてしまう傾向に積極的に対抗しなければならない、もしくは後方に持ち上げなければならない、もしくはこれら二つの動作を動作に行うことが必要である。ダウンスイングにおけるハブのアクションはヒンジの動作を付随して発生させ、よって基本的な動作のタイミングは、ハブ、ヒンジ、クラブヘッドの順番となり、これはそのまま人体の感覚で言えばボディ、両手、クラブヘッドとなる。

 

 我々がここで「上胸部および両肩」というかわりに「ボディ」という言葉を用いるのには理由がある。ゴルファーが可能な限り最大のパワーを発生させるためには、彼のスイングおけるハブの回転を可能な限り力強いものにしなければならず、そのためボディ全体の大きい筋肉を使用しなければならず、そのためには彼は、それら筋力がそのゴルフスイングにおける「上方のレバー」に働きかけるよりも充分に早い段階でそれらを使用し始めるようにしなければならない。

 この場合このゴルファーは、おおまかに言って両脚、両ヒップ、体幹、胸部、両肩の順番でパワーを作り出している。この状態からは、動作全体のシーケンスから見れば、ハブをスイングするアクションは四番目に行われているように見えるかも知れないが、実際にハブの動作で意味をなしているのは、両肩および両腕のパワフルなローテーションにスピードをビルドアップさせるための全体としての連続動作なのである。別の言い方をすれば、このステージでモデルにとって重要になるのはどれくらいパワフルにハブをターンさせるかということであり、どのようにターンしているかは問題ではない。

 

適切な緊張感を伴うシーケンス

 しかしながら、ハブの動作をビルドアップしていく過程において注意しておかなくてはならない重要なポイントが一つ存在する、ボールを打撃するクラブヘッドのフォワードスイングの動作において、ゴルファーがパワーを付与するためのいかなるアクションにおいても、不必要に緩んだ状態になることがあってはならない。爪先からクラブヘッドにかけて、何が起きるにせよ、それらは全てタイトなシーケンスを伴うものであるべきなのだ。このことを機械的に分析しているものが7:5の図であるが、これを見れば主張の意味がより明確になるはずだ。

 a,b,c,の三つのシリンダーがあり、それはすべて同じ中心軸を持って回転している構造だが、それぞれのシリンダーは直下のシリンダーとスプリングのようなものでつながれた状態であるとしよう。またシリンダーaはしっかりと地面に固定されているものとする。シリンダーの直径およびスプリングの強さは、上のシリンダーになるほど小さくなるとする。最初の図は、この構造物のスプリングがのばされていない状態である。

 ここで、シリンダーcを時計回りに回していき、それぞれのスプリングが限界まで伸びきるようにしていくとするならば、まずcのスプリングが伸びきって、ついでその下のbのスプリング、次にその下のaのスプリングが伸びていくことで、全てのスプリングが伸びきった状態になるわけだが、さらにこの状態で一端ロックすることが可能な構造であると想像して欲しい。筋肉とスプリングを全く同じものに考えるべきではないが、ゴルファーがトップオブバックスイングの状態にワインドアップしている状況に極めて近い、というのはそれぞれのシリンダーはスプリングを最大限に伸ばしても30°程度しか回転できないが、全ての回転量を全て合計すれば90°程度になるのであり、これはゴルファーの両肩が回転出来る角度とほぼ同じなのである。

 ここで問題であるが、同じポジションから始動するとした場合、どのような順番でスプリングがリリースされていけば、シリンダーcの頂上につけられた構造物のスピードを最大限に出来るのだろうかということである。

 正解は、下から上に動作が連鎖するようにこれらは扱われるべきなのである。すなわちシリンダーaに装着されているスプリングがまずリリースされ、その結果として他の二つのスプリングは限界まで伸ばされることになるためa,b,cのシステム全体が単一のユニットとして機能することになる。最初のスプリングの全ての、あるいは大半のエネルギーがシステムに注入される際(その正確なポイントはスプリングの強さおよびシリンダーの直径に応じて変化する)、bとaをつないでいるスプリングがリリースされる。これは次にb+cのユニットをやや速い速度で動かし、同時にシリンダーaの回転速度を遅くさせる現象を発生させる。スプリングとシリンダーの最適な組み合わせはaが再び停止するまで減速させるものだが、一般的にこれは期待出来ない。第二のスプリングのエネルギーの全て、あるいは大半を使い果たしたとき、cとbをつないでいるスプリングがリリースされる。これはcをさらに速い速度で動かし、同時にbの回転速度を減少させる。

 この段階ではcだけが速く動き、bとaは遅くなっている。ここでさらにゴルフスイングの解剖学により強くこだわるのであれば、シリンダーcに頂部の構造物のクラブをストッパーの限界まで強くヒンジさせておくことを付け加えるべきかもしれない。

 ヒンジのリリースは、スプリングによるcを回転させる作用が発揮されきるまで遅らせるべきである。要するに、オペレーション全体を通じて、クラブヘッドとスプリングの間の関係において緩みが発生している時間はひとときもないということになる。

 この状況下で、もしこの機構のどこにおいても緩みが発生すれば何が起きるか、あるいは度合いはどうあれ各スプリングが間違った順番で動作したら何が起きるかは容易に想像がつく。例えば、シリンダーcとシリンダーbを接続しているスプリングがリリースされることによって最初にシリンダーcが動いてしまうとすれば、そしてその後のいずれかのタイミングでbとaをつなぐスプリングがリリースされることでbが動かされるとすれば、少なくとも再び各シリンダー間のスプリングが伸長されない限りcのスピードがまったく加えられない状況でcは回転することとなる。このような事態は、cがそのスプリングのみのエネルギーで回転をしてしまうようなc独自の始動位置に達する前に充分な時間が確保されていれば発生しないはずなのである。

 従って「タイトな」シーケンスとは常に下方から発生して、上に、外に向けて、最終的な頂上部の動作に向けて下方の(そしてより強度のある)スプリングから相当量のエネルギーが伝達されるべきなのであり、緩みのあるシーケンスはそこにロスを発生させるばかりか、最悪の場合下方のシリンダーからの運動エネルギーの全てを失ってしまうこともあり得るのである。

 全てのシリンダーおよびスプリングが最適な状態にあるとしても、上方に向けての最大限のスピードを達成するための各イベントの精密な発生タイミングを計算することは、非常に複雑な問題である。そしてこれを人間のゴルファーに当てはめる際、状況は極めて重大に複雑なものとなる。

 一般論としての結論、すなわち全ての回転体あるいはスイングのシステムは地面に近い方の部分から引っ張られるように動作すべきである、という主張は正しいにも関わらず、これまでのところなんら実用的な活用方法が存在するわけではない。つまり人類のゴルファーに関して言えば、両脚がヒップを回転させ、ヒップが体幹を、体幹が上胸および両肩を、両肩が両腕を、両腕が両手を、両手がシャフトを、そしてシャフトがクラブヘッドを動かすということを主張するのみである。これについては第十一章で紹介するホーガンのシーケンスにその全てを確認することが出来る。

 ボールを打撃の通じたフォワードスイングで緊張がリリースされたボディの内で、最後に残るのは両手首である。ボディ全体で作り出されるエネルギーの内のかなりの部分を両手首がアンコックすることでクラブに伝達される際、クラブはボールへの打撃に向けて自由に振り出されることが可能となる。しかしながらまさにこのポイントに至るまでのフォワードスイング全体を通じて、そのテンションは作り出された通りに保全されていなければならず、つまりこの時点で初めて全ての部分はシーケンスにおけるパワーにおいてその束縛から逃れることが出来るのである。

 これこそが下に、前に、ボールの打撃を通じて「クラブヘッドをスイングすること」(訳者注:米国の古典ゴルフ本)にまつわるエッセンスなのである。またこのことは我々が第六章の終盤にたどりついたポイントを想起させるものであり、これ以降の章へと続いていくものでもあるのである。

先を急ぐもんで字が多すぎるので松田鈴英選手の癒やし画像でも付けておきます。明日は優勝目指して頑張ってねー!

(C)ALBA

モバイルバージョンを終了