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第二十章 ゴルフにおける「曲がる」ショット スライスとフックの実用的メカニクス(1)

第20章 ゴルフにおける「曲がる」ショット スライスとフックの実用的メカニクス

こではゴルフのエアロダイナミクスについて触れることにする。ゴルフボールの弾道および、その飛行中の軌道のカーブに影響を与えているスピンの科学は、魅力的な分野である一方、複雑な研究分野であると言える。第24章、25章ではこれについて現在のところ判明している事実について紹介している。

現段階では、コース上でのボールの挙動に影響を与えるという実用的な側面を明確にするために、読者諸君は相当に単純な三つの提案を受け入れるよう求められている。実際には。これらは相当にシンプルな文面になっているものの、それでもなお真実である。

  1. ボールが自身の軸を中心に回転している場合、ボールは空中を飛行するときに常に曲がる傾向がある。また、他の力が干渉しない限り、ボールを前面から見て回転している方向に曲がる。
  2. プレーヤーは、ボールに「バックスピン」をかけることだけで、ボールを空中において飛行させることが可能である。ロフトの程度に応じてフェースが傾斜しており、ボールをオフセットに打撃することでゴルフクラブはこれを実現している。

ドライバーですらロフトによって10°程度はフェースが傾斜している。このことは、250 ヤードのドライブでボールが秒速66m/sで飛び去る際に、3,600回転/分の回転を与える計算になる。

20:1 ドライバーでもこれだけのバックスピンが発生している。この二つのハイスピードカメラの映像の間の時間は、およそ0.001秒〜0.0002秒であるが、それでもボールには30°程度のスピンが発生している。これを1秒あたりに換算すると、およそ70rps(4,200rpm)となる。

ゴルフの全てのストローク(一部の完全なミスヒットあるいはパッティングを除き)において、ボールにはバックスピンが発生している。したがって、ボールは常に飛行中に上向きにカーブしようとしていることになる。もちろん、重力はそれに対してかなりの程度まで対抗するが、それでもバックスピンのかかっていないボールに比べて、通常のショットで放たれたボールは相当遠くまで飛行する。

  1. 空中を飛行するボールが一方から反対の一方に曲がるボールである場合、左右方向のスピンが発生していると言えるが、これはバックスピンが発生することと全く同じ理由で発生している。つまりクラブフェースの向きが、ボールを打撃する際にヘッドが移動鶴方向に対して直角ではなかったことを意味している。

ボールは当然のことながら二つの方向に回転することはできない。サイドスピンの要素が発生すると、図 20 2 に示す通り、水平軸を中心に回転するのではなく、わずかに傾斜した軸を中心に回転する。よって、ボールが単純に右または左に曲がることは滅多に起きず、ほとんどの場合、ボールを持ち上げようとする作用が優勢となる。

20:2 二つのスピン方向の合力について。完全なバックスピン(地面に対して完全に平行な軸回転)と、完全なサイドスピン(地面に対して完全に垂直な回転軸)が合わさることで、スピン軸がその中間で傾いた状態となる。サイドスピン量の割合が(純粋なバックスピン量に対して)大きいほど、結果として発生するボールのバックスピン軸は、地面と平行な状態から逸脱する量が増える。大きく曲がるスライスの回転量(rps)はおおよそ一定の数値となる。

最も単純なカーブ効果: ロフト角

ゴルファーならば誰でも知っていることだが、上記の現象を発生させる最も簡単な方法は、水平ではない地面からアイアンショットを放つ場合だ。アドレスでボールが自分の足より下にある(つま先下がりの)場合、ショットは空中で右にカーブすると予想される。また、足の上にある(つま先上がりの)場合、左に曲がると予測される。

なぜこのような現象が発生するのかについては、頭の高さで壁の側面に張り付いたボールを、ロフトのあるアイアン打つ状況を想像すれば簡単に理解できるはずだ。

この現象は、重心配分、バランス、あるいは手首のアクションといったものによる影響ではなく、単純にプレイヤーが芝生の表面にエッジを平行にスイングできたかどうかによってのみ発生している。よってこうした状況下におけるサイドスピンは、ボールコンタクト時におけるライ角が全てであり、クラブフェースをスクエアかつヘッドを完全に真っ直ぐに打ち抜いたとしても起こりうるのである。つまり実際には「サイドスピン」というよりは、ロフトが左右に角度がつけられたことで起きているものである。

こうした傾斜したライによってもたらされる困難に対応する方法はいくつか存在する。単純にカーブを見越した上で狙いをつける、あるいはインパクトにおけるフェースの向きが開く、あるいは閉じるようにセットアップを行うことで、傾斜によって発生する影響を打ち消すといったことである(例:もしつま先上がりであれば、フェースを開く)。もしこうした傾斜地のライが、ホームコースで頻発するのであれば、ソールが一般的なクラブよりもラウンド形状になっているものを使用することで、ヒールあるいはトゥが地面に接触することを怖れることなく、通常のスイングプレーンに近いスイングを行うことで影響を減らすこともできるだろう。

20:3 ロフトが傾けばサイドスピンが発生する。こうしたライでいつも通りのスイングを行えば、この9番アイアンのショットは恐ろしくフックするはずだ。なぜならば地面に正確にソールをした状態では、ロフトによってクラブフェースが極端に左を向いた状態になるからだ。この現象を軽減する方法はいくつかある。例えばクラブフェースをややオープンにする、あるいは単純に左に曲がることを見越してあらかじめ右を向いて立つ、これら二つを組み合わせるといった方法だ。

真のサイドスピン : 基本的ルール

ゴルフの他のすべてのカーブショットは、まったく別の原因から発生している。つまりクラブフェースは、スイングのクラブヘッドパスに対して、インパクトじゅう常にスクエアな状態でスイングされているわけではないということだ。ここで言う「スクエア」とは、正確にホールに向かうラインを向いているということではない。正確には、クラブヘッドがインパクト中に移動している方向に対して90°の向きを保っているということである。

目標方向に、左右に曲がらずに飛んでいくということは、インパクト時におけるクラブヘッドパスとフェースの両方が「スクエア」であったことを指す。つまりクラブフェースの向いている方向と、スイングにおけるクラブヘッドパスの双方が正しくターゲット方向を向いていたということである。しかし飛行中にいずれかの方向に曲がるショットの場合では、それらが目標とするライン方向であるかに関係なく、インパクト中のクラブフェースとクラブヘッドパスの方向が異なっていたということである。

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