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第二十章 ゴルフにおける「曲がる」ショット スライスとフックの実用的メカニクス(2)

サイドスピンの適用: フックとスライスはどのように始まるか

クラブフェースの中央でボールを打たないとサイドスピンがどのように発生するかについては既に説明した。次に、ボールがクラブフェースのセンターで打たれたときにどのような事態が発生するかを見ていくことにする。

もちろん実際には、2 つの効果が同時に発生する可能性もある。しかし本章の残りの部分では、クラブフェースのセンターで起きたインパクトによる、純粋なサイドスピンの効果のみを検証していきたい。これは一般的なゴルファーのフックおよびスライスのほとんどの事態に関与しているものである。つまりこれらは全て、クラブフェースとボールが斜めに衝突したことによって、インパクト中にボールがクラブフェース上を移動し、結果ボールの回転方向が左あるいは右に傾くことで発生するのである。

ゴルフにおける「曲がる」ことの議論を可能な限り明確なものにするため、本章で当面バックスピンの存在については考えないことにする。すなわり、ロフト角ゼロのドライバーのフェースセンターで打撃を行った場合の影響のみについて考えて見よう。

20:4 スイングの方向と、インパクト時のフェースの向いている方向が異なる際に、どのようにサイドスピンが発生するかについての図解。このときボールはフェース上を回転しながらスライドする傾向にあり、図中のような状態であればスライス回転を発生させる。

こうした条件下での全てのショットを管理する一元的な原則が存在する。サイドスピンの効果が強く発生するほど、クラブフェースのスピードも減少し、通常は空中を飛行するキャリーの量も減少する。この原則は、どのようなロフトのどんな番手のクラブで行われた打撃でも共通して当てはまるものであり、スピンを生み出すオフセット衝突の摂理と言える。

科学的な言語で言えば、クラブヘッドの運動量のあくまで一部分のみが、ボールを前方に推進するために使用されているということになる。つまり、クラブのロフトによって斜めの衝突になるのか、あるいはスイングの方向に対するクラブフェースの向きのズレによって斜めの衝突になるのかに関係なく、ボールに与えられる速度は完全にスクエアな状態のインパクトと比較して低下するのであり、また斜めになっている度合いが強いほど、ボールが前方に飛行するエネルギーも低くなる。

ゴルファーは、カーブするショットの二つのメイングループを認識している。すなわち左に曲がっていくスピンを有するドロー、フック、クイックフック、ダックフックなどの球種のグループと、右に曲がっていくフェード、スライス、あるいはプッシュスライスなどと呼ばれる球種のグループである。

これらのグループにおいて、ドローやフェードと呼ばれる球種は一目を置かれる存在であり、その曲がり幅がわずかであることから、ゴルファーが意図的に発生させる(あるいは打ち終わった後でそのように主張する)場合があるものだ。しかし、実際には、双方のグループにおける各球種の境界が明確に示されることは決してなく、それらを表現するゴルファーの言語は、何よりも打ち出し方向とスピンによる曲がる幅の活用に重きを置いている。

20:5 5個のフックのインパクト。いずれの場合でも、クラブヘッドがスイングされる方向(点線矢印)が、インパクト中のクラブフェースが向いている方向(白い三角形の矢印)よりも右を向いている。

例えば20:5の図中にあるものは、全てある種の「フック」であり、従いスピン軸の方向はクラブフェースが向いている方向よりも右斜めに曲がっていくことになる。従い全てのケースにおいて左にスピンするため、結果ボールは左にカーブを描く。しかし空中でボールが曲がる量がわずかであるとしても、(a)のようにクラブフェースがシャットな状態であれば、クラブヘッドが振られたラインがやや右方向であるとしてもボールの打ち出し方向はクラブヘッドが振られたラインよりも左側になり、実際に空中でのカーブはそれに対応してかなり急激なものとなる。

もちろん、空中でのカーブの量は、インパクト中における、クラブヘッドのスイング方向とクラブフェースの向いている方向の角度差の直接的な結果である。例えば、図中の(a)(b)では、フェースの方向は全く同じ方向を向いていて、さらに(a)のほうがクラブヘッドのスイング方向は(b)よりも右方向であるにも関わらず、(a)のボールのほうが(b)のボールよりもさらに左の深いラフに飛んでいく理由である。

意図的に発生させる「ドロー」は、ターゲットのやや右方向に打ち出される微弱なフックであり、クラブヘッドのラインとクラブフェース向きの角度差が比較的少ない状態から発生するサイドスピンによって、目標方向に戻ってくる球筋である。このとき、クラブヘッドのラインとクラブフェースの向きは共にやや右方向であるが、クラブフェースの右を向く角度の量の方が小さいために、ややターゲットの右方向に打ち出されて中央に戻ってくる球筋となる。図中で言えば(c)のような状態だ。

その点、ドローはフックグループにおけるそのほかの球種とは全く異なると言える。実際に最大限に曲がる純粋なフックを打つ場合というのは、プロが気に囲まれたスタイミーなグリーンにボールを運ぶと言った特殊な状況のみである。

これら全ての意図的なサイドスピンの活用は、その弾道を特定の目的のために操作しようとするプレイヤーによって、選択および制御されたものであり、多くの場合、カーブをさせることによる飛距離のロスを受け入れた上で、最も安全な角度でグリーンにボールを着弾させたい場合に使用されている。

ここで様々な種類のフックグループの球種について触れたことは、様々なスライスグループの球種、つまりカットやフェードその他にも当てはまる。ただし、発生しているメカニクスが真逆であるだけだ。どのような種類であれ、右にカーブさせるサイドスピンでは、クラブフェースの向きはグラブヘッドがスイングされる方向よりも右方向を指すのであり、このためフックと同じ原理でサイドスピンが発生するが、その方向が逆になるというだけの話である。

 

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