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第九章 右腕はどのようにスイングを補強しているのか(その3)

前回までの記事はこちら

右手による左への積極的なアシストを行う

これまでに揚げた右手の効用について、具体的にはどこでストロークへ最大限のパワーの付加を行う事がなされているのだろうか。

スイング中、上方のレバーの構造にゆがみを生じさせるあらゆる要因に対して適度な緊張感を与えるということに加えて、右手は左腕のスイングの動作に自然に発生している諸要因に対して、積極的なアシストを行う事によって、インパクトに向けたクラブヘッドのスピードを増加させる役割を担っている。

この点に着目してモデルを考えてみる。クラブヘッドにスピードを付加するための最も明らかな方法は、単純にスイングに調和したかたちで下方のレバーを遠心力によって外側に振り出すという事よりも、ヒンジを何らかの方法によって活用することにある。左腕一本でこれを行う場合、意図的に力を込めてインパクトに向けた手首のアンコッキングおよびアンローリングを行う事が必要になる。

このような動作を左手首主導のみによって行うだけの筋力はほぼ期待出来ない。両手でスイングを行う場合でさえ、前述した「ネジ回し」の動作によってこれを効率的に行っているプレイヤーもいるものの、左手首によるこの動作はほぼフリーヒンジングによって行われるのである。

両手でプレーをする場合、アンコッキングの動作のみを通じてこれを行うことがいかにパワーを込められないものであるかは、左手のみで「ワッグル」をしてみることで簡単に確認することができる。しかしその状況にひとたび右手を添えた場合、数回ワッグルを行っただけで両手で行う事の優位性を実感できるのであり、同時に手首がアンコックされる際にヒンジが真っ直ぐになることでクラブヘッドを加速出来る事がわかるのである。

これを行うにあたって、右腕の動作は単純に「押す」、つまり肘から先を伸ばすことになる(9:5参照)。

9:5 右腕がヒンジを伸ばす際の加速を行う方法→プッシュである。

右肩から右腕をこのように押す動作は、人体の動作では非常に力強い部類に入り、そのために左腕の基本的なフリーヒンジの動作におけるタイミングの複雑性を誘導することが可能になるのである。

ブレードのロールを加速させること

基本的なスイングでは、左腕は多かれ少なかれクラブヘッドをインパクトに向けてロールさせて打ち出し方向に向けてスクエアにしていくが、その際は手首のフリーなアッコキング動作に調和したものとなる。この動作は右腕によるアンコッキングの動作によって発生するいかなる加速に対しても、比例して発生するローリング動作の加速に追従するものとなるか、もしくはボールが打撃される際の打ち出し方向のラインに対してクラブのブレード(エッジ)が右方向を向いたままとなる。

しかしながらここでは、物事を正しく分類しようとする機械的傾向が自然に発生する。グリップにおける右手のオーソドックスなポジションは、右腕がアンコッキングの動作を加速させるにプッシュを行う方向に対応したものとなるとともに、クラブがボールを打撃する際にフェースが目標方向に対してスクエアとなるように、スイングにおける左腕を右腕が自動的にアシストできるようになることを確実にしている。

ゴルファーがクラブを保持する角度では、右手は左手の先端に自然に置かれる。フォワードスイングのプレーン上で右手がクラブヘッドを外側にプッシュするということは、右手はグリップ上の左手の先端をプッシュしていることになり、プラブフェースをラインに対してスクエアにロールさせてくるためのパワーを付与している。

左腕とともに、インパクトに向けたスイングにおける右腕のアクションはこれら二つの独立した動作を統合したものとして考えられる。実際のスイングにおいてこれらは自然に同時に発生しているように見えるのだ。

再びモデルの例を挙げれば、ゴルファーは「インパクトを通じてクラブフェースをスクエアに保つ」ことをできる限り自然に行う必要がある。モデルのパターンに調和した良いタイミングのハンドアクションは、ハブとヒンジの双方にパワーが付与される際、インパクトを通じてクラブフェースをスクエアにしてくれる。これなくしてしれ以外の事は起こらない。

そして両手はインパクトを通じたこれら動作の自動的な結果としてフォロースルーへとスイングされていくが、それはあたかも左腕が左腕それ自体をスイングしているようなものとなる。

インパクトに向けたフォワードスイングでクラブヘッドをプレーンに送り込む際に、どの程度前腕のローテーションを伴うかは、フォロースルーにおいて両手がどの程度ロールを継続するかを決定づける傾向がある。

前腕のローテーション多く生れば、モデルの必然的な結果として、右手は左手を追い越してクロスすることがインパクトの直後に発生することになる。反対に、前腕のローテンションが少なくなれば、右手が左手を超えてクロスするタイミングはゆっくりになり、フォロースルーにおいてそれは顕著に見て取ることが出来る。 

右腕における原則的かつ実用的なルール

以下は、左腕と調和したゴルフスイングへの右腕の参加が、基本的なボールへと向けた左腕のスイングのアクションを補強し、クラブヘッドを最終的に振り出す際にスピードおよびスナップを付加する際に発生している基本的な構造群についてである。

これら諸構造を支える存在として、右腕は基本的な左腕のスイングのパターンを何ら代替することがあってはならない。そうした事態は、単純にパワーを増そうとする際に発生する傾向がある。

またダウンスイングのごく初期にこの傾向が発生した場合、それに対抗することは非常に難しく、悪い結果を迎える可能性が高くなる。

多くの場合、ここでゴルファーに起きていることは、モデルの要件に即して良くターゲットを捉えたトップオブザスイングのポジションから、ダウンスイングの開始時に右手によってコントロールすることを許してしまうことである。これはほぼ確実にフォワードスイングのタイミングを崩壊させるのだが、本件の詳細については次章で触れることにする。

しかししばしば発生することでより深刻な結果、つまりプレーンの外にスイング全体を持ち出してしまう事態を招くものがある。右前腕による強いプッシュ(かつそれがスイングのプレーン上で行われていない場合)は両手と、それにつながっているクラブヘッドを、オンターゲットのプレーンの外、および上に持ち出してしまう事になり、クラブヘッドがオンコースに慣性を維持出来る瞬間をほとんど、あるいは全く持たない状態を作り出してしまう。

このプレーンの外に外れたポジションからは、クラブヘッドをボールの後方からスクエアにターゲット方向に向けて打撃することは不可能である。必然的にターゲットラインを横切ることとなり、スライスもしくは左方向へのストレートプルのボールを発生させるが、結果はインパクトの瞬間のフェースの向きによって異なる。こうしたアクションは、しばしば専門家が表現するところの理想的な状態である「真っ直ぐに突き抜ける」かわりに「曲がって出て曲がる」状態を作り出す。ちなみに前者の言葉は、モデルのアクションを非常に良く表現したものになっている。

専門家がその指導においてしばしば警告する、スイングのこのステージでの「強い右腕」に対しての用心というものは、従い科学的な見地からも意味をなすものである。右腕のアクションは、厳格に第七章に示された順番、すなわち両脚、体感、両肩両腕、両手、クラブ、によって支配されたものでなければならない。しかし(オーバーパワーでないかぎり)右腕がゴルフスイング全体を強化することは事実であり、それは基本的な左腕のアクションを補助するものである。

これこそが良いゴルフを行うための原則的かつ実用的なルールである。

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