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ホーマー・ケリー氏の民族性

前回の記事では"The Golfing Machine"はアメリカ人であるホーマー・ケリーが英語で書いた書物であるにもかかわらず、あまりにもアメリカ人的なコミュニケーションから逸脱した言語で書かれているということを書きました。

ケリーさんがTGMを書き上げるまでの経緯につきましては「TGMものがたり」にまとめてありますので以下の考察に進む前にそちらをご一読いただくと幸いです。

直感的に、では「どんな民族」の言語で書かれているのかを考えると、もうこの民族しか考えられないと思うわけです。

その民族の特徴とケリーさんのスタイルの符合する点としまして

1. とにかく勉強する

ケリーさんはあまり経済生活や社会的基盤に関心がある方ではない一方、やはり長年にわたる研究の末にこの奇妙な本を上梓して、それが現代にいたるまで細々と物議を醸したりするわけですから、やはり大変な勉強家であったことは疑いようがないかと思います。

2. 因果関係に異常にこだわる

二度目のラウンドで"76"を出して、「なぜ」それが出来たのかについて周りのレッスンプロから納得のいく説明を得られなかったことがTGMの研究を始めるもとになったと言われています。

3. システム、体系化が得意

前回の記事で全体像が見えないとか書いてるのでちょっとアレですが、要素分析に落とし込むことまでは出来ているわけですから、まぁ得意と言ってよいのではないかと。

4. 交渉に長けている

ほぼゴルフのド素人がこれだけ多くの人を巻き込んだことは事実なわけですし、ベン・ドイルさんを引き込むあたりでの営業力はたいしたものでした。

5. 流浪の民である

まぁケリーさんは結構仕事クビになったり三回結婚したりでその都度住むところも転々としてるんですが、本人はそんなの気にしていないように見えます。まぁアメリカ人ってそんなもんだよと言われればそうな気もいたします。

で、その民族とは、分かる方にはもうお分かりだと思うのですが

ユダヤ人です。

「TGMものがたり」では教会の仲間から出版エージェントやベン・ドイル氏などを紹介してもらうエピソードがあるので、ホーマー・ケリー氏がキリスト教徒であることは間違いないのですが、それは先祖がいずれかのタイミングで改修したユダヤ系キリスト教徒なのではないかというのが私の推測です。

ユダヤ人の特徴については様々なまとめが存在していると思いますので私がまとめるまでもないとは思いますが、上記の流れで簡単にまとめますと

まず、ユダヤ人は5才になるとトーラー(旧約聖書)とタルムード(後述)の暗唱を始めます。とにかく勉強することを親が熱心に勧めるのは「財産や土地は奪われても勉強したことは奪われない」というこの民族の歴史を反映しているものでもあります。

私も今回初めて旧約聖書をオンラインで読んでみましたが、まぁ世界どこでも神話というのはそう言うものなのかも知れませんが「そのエピソード本当に必要?」と思われるやたら残酷な話やらくだらない話が収録されています。それに対してユダヤ人はひたすら「なぜこのエピソードが聖書に載っているか」を真剣に考えます。あるいはそうした研究のために働かないという人もいるようです。

また伝統的に土地や財産を持たなかった彼らは、金融、宝飾、服飾、建築、芸能などの分野(卑しいとされていた職業)で能力を発揮しますが、保険制度、証券化、株式会社による不特定多数による出資の仕組みなどは全てユダヤ人が発明したものです。これによって単なるバクチに過ぎなかった「航海」は「貿易」に変化しました。

ユダヤ人はある程度その名字でユダヤ系かどうかが判断つきます。
代表的な著名人では

アインシュタイン、バーンスタインなどの「シュタイン(石ころの意味)系」

ポートマン、カウフマン、ホフマンとかの「マン(男、人の意味)系」

ザッカーバーグ、なんとかバーガーとかの「バーグ(国や地方の意味)系」

とかですが、ケリーという名字がユダヤ系なのかどうかはちょっと調べた感じでは分かりませんでした。

また先祖がユダヤ系であるとしても(そういう名字であっても)現在はキリスト卿に改宗しているという人も珍しくありません(なにしろ戒律が厳しいので)。

そもそもユダヤ人というのは、血統的に決定しているものではありませんので、ユダヤ教徒であればすなわちユダヤ人ということになりますので、ユダヤ教徒であるための諸条件を満たせば私でもユダヤ人になれます(まずカツレイという男子にとって非常にハードルの高い決まりがありますが)。

ではユダヤ人が重点を置いている信仰は何をよりどころにしているかですが

その1 タナハ(旧約聖書)

まあ当たり前なんですが、トーラー(律法)、ネイビーム(預言者)、クトビーム(諸書)の三つの頭文字をとってタナハというらしいのですが(「旧約聖書」というネーミングはキリスト教徒から見た言い方)、基本はこれを丸暗記するそうです。トーラーは「モーセ五書」とも言われていて、天地創造、ノアの方船、モーセの出エジプト記とか有名なエピソードが出てきますが、後半はそれら苦難の歴史の経験から決められている「戒律」の記述です。なので「律法」という書物のようです。

TGMも前半は諸原理の紹介とゴルフの基本的成り立ちを説明して、その上で後半はバリエーションを示して「ここに書いてあること以外はやるなよ」と言っているようにも思えます。そうなるとあの章の並びも少し理解出来る気がするんですね。

その2 ラビとタルムード

ラビというのはユダヤ教における牧師です。そしてタルムードというのは古代のラビから受け継がれてきた口伝の説法を記述したもので5000ページにも及ぶ膨大な量の書物です。ここにはトーラーをベースとした経済、結婚、食べものの制限などありとあらゆる生活エピソードが含まれており、ユダヤ人の道徳概念はこの書物から出来ていると言われています。言ってみれば「トーラー」は「六法全書」で、「タルムード」は「判例集」といった感じです。そもそもは口伝だったものが記述されたのは、いくつかの大きな戦争を経て、ラビが全滅した場合伝承が出来なくなる可能性に備えてと言うことです。つまりそもそもトーラーはこうした解説本がないと理解が難しい本なのですね。

TGMではラビはベン・ドイルをはじめとする公認インストラクター群なのであり、それらのメンバーが個別に流派を作ったり、独自の解説本を作るなどして発展するという想定だったのではないかと推察します(それほど流行らなかっただけで)

その3 カバラ

勤勉且つ自分たちの戦い方を熟知した(そのためのルール作りも得意な)ユダヤ人は、イスラエル建国までわりかしどこの国でも迫害されてきた歴史を持ちますが、中世キリスト教徒がなにかと成功をおさめるユダヤ人に対して最も恐れ、また興味を抱いたのがこのカバラというなにやら秘密めいたシステムですが、長くなるので今回はここまででございます。

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