スインガーの概念(その2)

コントロールをどのように習得し、活用するかについての問題は、より詳細な議論を要するのでこれ以降の章で触れることにして、ここでは次にバランス、つまり三つの基本的要因の二つ目について言及したい。バランスとは様相、あるいは状態のことである。このことはシンプルで容易に理解されるものと思う。人間が直立し、二本の足に均等に体重をかけているとき、この人間は静止している、あるいは動作を行っていない状態において、最も容易にバランスを保持するためのシンプルなフォームを体現している。この人間が歩き始めるとき、彼は動作状態のバランスへと移行する。いずれの場合でもこの人間は対応する能力を持ち、最も容易なバランス状態を体現できるが、これらは全く意識的な思考や努力を必要とせずに調整されているものである。

ゴルフストロークを行う際のバランスについて言えば、それは静止した状態からスタートし、動作の状態へと移行する。いずれのフェーズも、我々が意図して何が達成されているのかを注意深く確認しようとでもしない限り、直立状態から歩行状態へと移行するの同様にシンプルなものである。しかしそれを意図的な「体重の移動」などとして議論を始めるやいなや、バランスというものは非常にやっかいで迷惑なものになるのだ。クラブを後ろに引き、前に振るという動作を行う際に、どのようにしてバランスをキープするのかを考える事は明らかに不必要な苦悩を背負わされていると思わざるを得ない。こうした問題の最もシンプルな解決策は、単純に、意図してバランスを保持するといういかなる考えも捨て去ることである。

ゴルフクラブをスイングする際、それがどのようなアークを描くとしても、ボディは必ずある程度のターンを伴う。もしこのボディの体勢の変化が静止状態のバランスを変化させるというのであれば、それを補填する方向に調整するための何らかの動作が必要になる。理想的な状態は歩行状態であり、上り下りも凹凸もない地面の上を歩くときに人は意図的にバランスを保持しようとは考えていないはずである。しかし上り坂になれば、人は本能的に前傾姿勢になるだろう。人はこのようにしてバランスの感覚を常に調整しているわけだが、そこに特別な目的のもと調整するという意識を持って行っている人間はいないだろう。

これこそがまさにゴルフのストロークにおいても行われるべき事なのである。バランスの状態を調整しようとする全ての動作は、意識して実行しようとしているアクションの主目的に対して純粋に反応して発生すべきものであり、そしてその主目的とはクラブを振ることである。バランスを調整すること事態を目的として意識的なアクションを行うということはいかなる場合でもあり得ない。意識的な努力によって二つのアクションを同時に行う事は出来ないのだ。

ゴルフストロークにおける主目的は、クラブヘッドでボールを打撃することである。両手はクラブを保持し、制御する。このアクションの制御を意識して行おうとする際、それは両手の使用あるいは動作を通じて行われる。バランスの状態を調整することは、プレイヤーが両手を通じて行おうとしていることに反応するものに過ぎず、例えばインディアンクラブを振り回すといった、日常のなかで無数に発生している身体的行動に対して常に反応しているものである。

何かを両手で扱うことを制御している最中に、バランスを調整するためにボディを捻転させるなどという制御を同時に行えるということを期待することは出来ない。プレイヤーはボールをクラブヘッドで打撃するのであり、そのためにプレイヤーは両手の操作を通じてクラブヘッドをコントロールするのであり、ボディのターンや捻転を通じて行うわけではない。後者のような考えは忘れ、歩いているときのように、主たる目的に自然と反応するようにすることだ。

次にタイミングの問題に移るが、ここで単純な問題を出したい。タイミングというが、実際のところ我々は何のタイミングをはかっているのだろうか。そしてボールをクラブヘッドで打撃するのに、何故タイミングが重要になるのだろうか?実際にはプレイヤーがクラブヘッドで行っていることが何であるのかを感じ取れないならば、そのプレイヤーはタイミングに関して何のアイデアや感性にも通じることはない。私の考える答えはこうである。タイミングが意味することは、ボールに対してクラブヘッドがインパクトするまさにその瞬間に向けて、クラブヘッドの最高速度を達成することである。この観点について、ゴルフを研究する上での諸問題について分析的なアプローチ、すなわち正しいストロークの外見的側面の定義から求めることを好む者は、最大の速度を適切なタイミングで発生させるための要件を特定のボディ、両腕、両手などの状態から判断しようとするかもしれない。しかしこの方法が、全てのプレイヤーのストロークにおいて適切なタイミングを開発することに役立つとは私には思えないのである。

完璧なタイミングとは真のスイングのアクションを定義するものである。それはリズム、あるいは観測可能な動作のエッセンスである。もし人がヒモの先についたおもりをスイング場合、おもりの速度はそのシステムに投入されたフォースに比例したものになる。しかしのおもりの速度に関わらず、そこにはヒモの先につけられたおもりの存在の感覚が生じているのであり、それはシステムの外側に引っ張ろうとする力であり、遠心力の活用として知られる自然の摂理である。そこで発生している運動全体を通じて、そこに投入されているフォースと、結果として動かされるおもりの速度のあいだには、完璧な調和と均一性が存在する。繰り返しになるが、スイングのアクションは、この関係の均一性を作り出し、調整するための唯一の積極的かつ信頼性のある保険なのである。逆に言えば、真のスイングにおいては完璧なタイミングを作り出す事に失敗することは出来ないのである。

タイミングとは、スムースなリズムを伴うクラブの動きの産物である。例えば、縄跳びをしている子供を想像して欲しい。ここで発生している調和は、縄を両手で振って(スイングして)いるアクションにその意識を集中させることで生まれるものであり、ジャンプすることによってではない。縄をスイングするアクションそれ自体がタイミングとリズムを創出しているのであり、ジャンプをするアクションは縄のアクションに同調させられているものである。これを逆の意識で行おうとすればいかに難しくなるか想像してみてほしい。

ではこれまでに触れた、正しいスイングの本質的要素である、コントロール、バランス、タイミングについてまとめてみたい。コントロールは、クラブを振るうえでスイングのアクションを使用することでもっとも容易に獲得できる能力である。また、バランスとタイミングはスイング動作を覚えることで自然かつ論理的に発生するものであり、これら二つは意識的なアクションもしくは取り組みの結果として発生するものではなく、むしろこれらは意識的な試みによって発生するものであると認識した場合にやっかいなものとなる要素である。

コントロール、そしてバランスとタイミングは、クラブを振る際にスイングのアクションを開発していくことで習得される。我々はコントロールを、クラブヘッドを使用してなすべきことをなしている両手の感覚を通じて習得することが出来る。これこそが、私の考える、最もポジティブにゴルフを学習する方法であり、つまり我々が良いゴルフをしているときに何をしているのかを学ぶ事であり、プレーが思わしくない時に何が悪いのかを考える方法ではない。これは重要な姿勢の転換点である。ある目的地に向けて旅をするときに、どうすれば正しい道を見つけられるのかを教わる代わりに、間違った道を旅していると教えられるだけでは満足のいく旅行にはならない。クラブヘッドをスイングすることを学び、どんなときにスイングが出来ているのかを学ぶこと、これこそが私の長年にわたる指導における基本的な信条である。

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