いや暑い。部屋でクーラーつけてても全然暑い。雲出てこい。夕立降れ!
週末ゴルフしたらヤヴァいかも。
というわけで何やら話題の「LIVゴルフ」について思うところを書いておきます。
LIVゴルフ第一回大会優勝のシャール・シュワーツェル(個人・団体合わせて賞金6億4千万とか)とグレッグ・ノーマンLIVゴルフCEO
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LIVゴルフってなーに?
2019年くらいからPGAツアーに対抗して賞金規模の大きな「プレミアゴルフツアー」みたいなものをやるという構想は発表されていたのですが、今般サウジアラビア王室の潤沢なオイルマネーをバックに開催された新ツアーです。
「LIV」というのは「L」が「50」で、「IV」は「4」を表すので、54(ホール)、つまり三日間大会のフォーマットという意味らしいです。
CEOにグレッグ・ノーマン氏を擁立し、タイガーやニクラス氏にも数百億円規模のオファーを出して陣営に取り込もうとしたけれど断られたのだとか。
まぁなにしろ初戦の賞金総額が36億円とか破格でして、既にミケルソン、ケビン・ナ、ダスティン・ジョンソンなどが参加を表明して、今週アメリカで開催の試合ではケプカや我らがデシャンボー、リードにマシュー・ウルフにエイブラハム・アンサーなど、ベテランだけではなく若手選手も参加表明をしています。
この動きに対してPGAツアーは、LIVゴルフに参加した選手は今後のPGAツアーへの参加を禁止するとか、ライダースカップのアメリカキャプテンであるザック・ジョンソンも、LIV参加メンバーはアメリカ代表への招集を行わないと言ってるそうですし、フレッド・カプルスさんも「フィル(ミケルソン)とはもう絶交!」とかおっしゃっておりますので、コトはどうも穏やかではありません。
USゴルフ界での反応
で、そんなLIVゴルフの何が問題なのかを海外の記事の含めていろいろ調べてみたんですが、どうもこんな内容です。
・LIVゴルフの主宰会社はサウジアラビア王室の直接的な資金援助を受けている。
・9.11同時多発テロの実行犯の多くがサウジアラビア国籍だった。
・2018年にサウジ王室に批判的だったジャーナリストのカショギ氏が王室の指示で殺害された。
・2016年にポートランドで起きた少年がひき逃げされた事件の犯人がサウジアラビア人だった。
・サウジアラビアでは人権侵害がひどく、特に女性の人権や社会進出がほぼ認められていない。
・このような巨額を投じてペイパービューなどで回収できる見込みはないので、これは「スポ−ツウォッシング」だ。
とまぁそんな感じです。こんなダークなイメージの大会に、賞金が高いからといってPGAツアーを捨ててまで参加するのかといった論調で、アメリカでは結構連日のようにニュースになっているのだとか。
特に出場している選手に対して「この大会のカネの出どころについてどう思うのか」みたいな質問をしているインタビュー記事とかニュースとかが結構なボリュームで発信されております。もうすっかり反社会的組織のパーティに呼ばれて芸を披露した闇営業の芸人のような扱いです。
「ちょっと何言ってるのかわかんない」んですけど
あくまで現時点でいろいろ言われている情報だけをもとにした私個人の感想なんですけど、「これだからLIVゴルフはダメなんど」と言うことにはならないと思うんですよね。
・LIVゴルフの主宰会社はサウジアラビア王室の直接的な資金援助を受けている。
それはそうなんでしょうね。でもってその原資はオイルマネーですよね。世界中が中東の原油買ってて、世界中の経済や生活が依存していると言っても過言ではないですよね。そこで儲けたお金をスポーツ界に還元してくれるんだから、それってもしかしてだけど「いいこと」じゃないの?
・9.11同時多発テロの実行犯の多くがサウジアラビア国籍だった。
それもそうなんでしょうけど、私の知る限り9.11のテロを起こしたのはアルカイダという組織で、犯行声明もだしてますよね。でこのアルカイダというのはそもそもアフガン紛争のときにソ連軍にゲリラ活動を行う組織としてCIAが訓練して出来た組織でしたよね。だからと言ってアメリカにテロしたらアメリカ人が怒るのは当然なんですけど、だとしてもアルカイダとサウジアラビアがイコールであるという証拠はないですよね。
ついでに当時アメリカは確かアルカイダを支援しているのはイラクのサダム・フセイン政権だとして、「大量破壊兵器を持っている」とか言いがかりをつけてイラク侵攻してフセインをぶっ殺して政権打倒したんじゃなかったんでしたっけ?サウジアラビア人が実行犯だからサウジが悪いというならなんでそのときサウジアラビアに攻め込まなかったんでしょうか。
その昔日本赤軍という組織の日本人がテルアビブ空港乱射事件というテロを起こして何十人も殺傷した事件がありましたが、だからと言って日本赤軍=日本という認識になるのは間違いだというのと同じですよね。
・2018年にサウジ王室に批判的だったジャーナリストのカショギ氏が王室の指示で殺害された。
専制国家ってのはそういうもんでしょう。プーチンや習近平の跡目になりそうな人や批判的なジャーナリストなんて何人も原因のよくわからないお亡くなり方をしたり行方不明になってると思うのですが。
・2016年にポートランドで起きた少年がひき逃げされた事件の犯人がサウジアラビア人だった。
まぁそういう事件がいま開催中のポートランドの近くで起きたと言うことは事実なのだろうと思うのですが、まぁただの事故でして、LIVゴルフと何の関係があるんだって感じです。逆にこんな事件を持ち出してくるくらいしか「LIVゴルフ」のネガティブキャンペーンをやるネタがないんだろうなと思ってしまいます。
・サウジアラビアでは人権侵害がひどく、特に女性の人権や社会進出がほぼ認められていない。
いやイスラム教ってそういうもんなんですよ。ドバイとかだと女性の顔見えますけど、サウジだと女性は顔も肌も一切見せませんし、男が命をかけて守るべきか弱い存在なんですよ。それを欧米的価値観で「女性の教育や社会進出ガー」って言ってもそもそもそういう発想がない宗教なんですね。もともと遊牧民なんだから「国境」って概念も本来は欧米の押しつけなんですよ。まぁ石油が注目されるようになってからは変化していると思いますが。
「スポーツウォッシング」という単語
今回一番気になったのが、
・このような巨額を投じてペイパービューなどで回収できる見込みはないので、これは「スポ−ツウォッシング」だ。
この「スポーツウォッシング」という言葉なんですが、要は本当はダークなことをやっているのにスポーツに協賛、あるいは主宰を行うことでそのイメージを払拭しようとする行為を指しているようです。いや、あの、
スポーツってもともとそういうもんですよね?
確かにPGAはスポンサーを一生懸命集めて、放映権もしっかりマネタイズして永続性のある経営をやっているんでしょうよ。でもスポンサーは、「この大会に協賛すれば広告効果で業績が伸びる」なんて計算してませんよ。ただ単に企業のイメージアップのために協賛しているだけですよ。
それを言い出すなら、チベットやウイグルで民族浄化して東アジアに領土的野心を燃やしている非民主主義国家で「北京オリンピック」なんてやらなきゃ良いでしょうし、「ロシアワールドカップ」も世界中でボイコットすれば良かったんですよ。今年のカタールワールドカップだってオイルマネーですよね。
今回わかったこと
今回思ったのは、要するにアメリカ人は「自分の作りあげた『儲かる仕組み』をブチ壊されそうになるとキレる」ということなんですね。
バブル期に日本の企業がアメリカの有名な不動産や映画会社を買収したときも「アメリカ人の心がカネで買われた」みたいなことを言い出した輩がいましたが、そんなもん売る側と買う側が合意しただけじゃねーかと思いますが、自分たちが既得権に感じているものを侵害されると感じると結構ヒステリックな反応を示すということの例だと思います。
例えばNFL(アメフト)、NBA(バスケ)、MLB(野球)などでも、ほぼアメリカ人だけが楽しむコンテンツで世界中にそんなにコンテンツ需要があるわけではないですが、それでもどっかの金持ちが「三倍くらいの年俸規模で」別のバスケのリーグなんかた作ったらたぶん発狂するほど怒るんでしょうね。
サッカーみたいに世界中に需要があるコンテンツでは出遅れたので何もしませんが、そもそもアメリカというのは内需主導でコンテンツを作って、それをビジネスにしてきた国です。
例えばゴルフで言えば、やはりイギリスやスコットランドが本場というイメージが強くて、「最近はアメリカ人のゴルファーもそこそこやるらしいから、いっちょ英米の団体戦でもやって身の程をわからせてやるか」というのがライダーカップの始まりですし、「招待選手しか出られないスターばっかりの大会作ろうぜ」と言って始まったのがマスターズです。
さほどコンテンツバリューのなかったゴルフを、テレビの発達とともに一大コンテンツにしたのがIMGという今では世界最大のスポーツマーケティング企業ですし、アーノルド・パーマ−やニクラスなどがその時代を支えたスターとなって現在のPGAがあるわけです。
それを突然、ゴルフは世界的に需要が伸びていてコンテンツバリューありそうだから「賞金三倍くらいの新リーグつくりまーす」とか言って上前ハネようとしたらアメリカ人が怒ったというのが今回の騒動の中身ではないかと思います。
PGAにお願い
まぁ私がお願いしたところで聞いちゃいないでしょうけど、やっぱLIVにいった選手がPGAのフィールドで見られないのはもったいないと思うんですよ。なのでPGAでもLIVでもスケジュールに合わせて好きに選択できるようにした方がいいと思うんですよね。
プロスポーツ選手としては、肉体的時間的資源には限りがあるわけで、賞金が高い大会があるならそっちに流れるのは自然です。前向きに捉えればオイルマネーのスポーツ界への還元なんですから、あまり既得権にしがみつかない方がいいと思うのです。
少なくとも現在の、「LIVゴルフへのネガキャン」と「選手への恫喝」だけではなく、PGAが抱える問題点もよく振り返りをして健全なプロゴルフ界の発展のために頑張って頂きたいものです。