デシャン坊がやっと勝ちました。
やっとという表現になるのは、直近の6戦で全てトップ10入りを果たしており、ほぼ全ての大会で優勝争いに絡んでいたからですが、今回の大会を入れて出場7戦連続トップ10(うち優勝1回)というのは、どのようなフィールドであってもちょっと異常な数字ですし、アメリカPGAであればなおさらです。
もちろんデシャンボーと言えばここんところの飛距離がヤバいということで
Longest drives of the week for @B_DeChambeau:
377 yards
376 yards
374 yards
367 yards
366 yards
365 yards
364 yards
363 yards
362 yards
355 yards
355 yards
355 yards
355 yards
354 yards
353 yards
352 yards
348 yards
348 yards
346 yards
345 yards
344 yards
344 yards pic.twitter.com/0tWgS0WrUP— PGA TOUR (@PGATOUR) July 5, 2020
その飛距離やデブ化に注目され今や全米で坊関連のツイートやニュースが毎日のように飛び交って、中継でもラウンド中にプロテインバーをかじるだけで解説者が「またなんかモグモグ喰ってるよあのデブ、UHHAHAHAHAHA」と大笑いされるほど大人気のデシャン坊ですが、長年この男をDisる、そして彼の教科書である「ザ・ゴルフィングマシーン」を研究する者として、祝福の気持ちを盛大に込めてその特徴を解説したいと思います。
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純粋な「ヒッター」である
もちろんこれはゴルフィングマシーンにおける「スインガー」と「ヒッター」の分類のなかでの話ですが、そもそもゴルフィングマシーンでは理論上ではヒッターが有利になることを解いていまして、デシャン坊とそのコーチのマイク・シャイはずっとその研究と実現に長年取り組んできたわけです。
で、一言で「ヒッター」とは何かと言えば、クラブを持った左サイドを右サイドで「押す」という打ち方です。
その具体的な構造については、ゴルフィングマシーンの第十二章に詳細なコンポーネントが公表されていますので、やりたい人はやってみれば良いのではないかと思います。ブキッチョだけど筋力はあるという人にはオススメです。基本的な概念は、長尺パターの使い方と同じで、支点を決めて後ろから押すということです。
「デシャン坊はパター長尺じゃねーじゃん」と思う人がいるかもしれませんが、コイツの場合は左腕とパターを完全に一体化して、左肩を支点にした状態で右手で押しているので原理的には同じことです。
この打法を全ショットで行うので、ある意味シンプルさを極限まで追求したゴルフとなっています。このヒッターの特徴として
正確性、微妙な出力の調整に長けていて、エネルギー効率で劣る
ということがあります。実はデシャンボーの最大の特徴がここにありますが、現在ディスタンス上位のプレイヤーの中で、フェアウェイキープが60%を超えているのはデシャンボーだけです。あれだけぶっ飛ばしても、それほど曲がっていないということになります。加えて今回のロケットモーゲージの最終日は実はフェアウェイキープが14回のうちわずかに4回なのですが、それでもボギーを打たないのはグリーンオンを狙うショットがほぼウェッジになるからです。
本来正確性はあるが飛距離は出ない打ち方を、筋力の増強で補っているのがデシャンボーになります。ちなみにヒッターの飛距離は筋力で決まるので、理論上は筋力がつくほど飛ぶと言えます。スインガーの飛距離の最大値はほぼ体格で決まります。
ちなみに「オーイとんぼ」のとんぼちゃんも純粋なヒッターなんですが、ヒッターは理論上クラブをどのように握るかでいかように曲げ幅を決めることが出来ます。なのでデシャンボーも曲げて見せろと言えば結構曲げられるはずです。
まぁさほど筋力がありそうに見えないヒッターのとんぼちゃんがボールを曲げるのがウマイのはいいとしても、飛距離まで出てしまうは若干チートなのですが、そこはマンガなのでいいことしましょう。ちなみに「オーイとんぼ」にご興味のある方はこちらの記事もどうぞ。
実はオールラウンドプレイヤーである
一見すると単にバカっぽくぶっ飛ばして、ウェッジで寄せてボギーを打たないという大味なプレイヤーに見えますが、というか実際にそういう側面がないとは言えないのですが、上記の通りヒッターとは本来ボールを操ることに長けた方法です。実際にデシャンボーのスタッツを見てみると
パーオン率が高いのは予想通りですが、なにげにサンドセーブやパッティングも上位のスタッツなことがわかります。どう見てもそんなにパットが上手い選手には思えないのですが、スタッツが上位ということはそこそこ長いのを入れていると言うことになります。今回の大会で言えば16番のロングパットでバーディを奪ったことで勝利をたぐり寄せました。
ゼロベースで思考する
おそらく天性のKYというか、他人や環境に気を遣うということがありません。ものすごく良い言い方をすれば、常に置かれた状況で最善と思われる解を既成概念にとらわれずに探求する精神を持っています。
2019年のルール改正でピンフラッグを立てたままパットを出来るようになった際に、「立てたままの方がピンフラッグの材質によっては有利な場合がある」という面倒くさいことを言い出して、常識人のルーク・ドナルド師匠が「そんなのでいちいち考えてたらファスト・プレー推進のルール改正の意味がねーだろ」と怒られてます。
ちなみにルーク師匠は今回久しぶりの決勝ラウンド進出(-9、53位タイ)でした。
同伴競技者のゴルフを壊滅させる
これはもうどうしてそうなるのかはいろんな要因があると思いますが、同伴あるいは周辺競技者のゴルフをメチャクチャにします。
おそらくプレーが遅い、態度がでかい、無神経、理不尽な飛距離、調子がわるいと周辺のモノや人に当たる他いろんな迷惑をかけていると思うのですが、ここ最近だけでも同伴のダスティン・ジョンソンやマキロイ、今大会ではパトリック・リード、また最終日同伴だったトロイ・メリットなどを失速させています。この能力もフィールド全体の中で大きな強みになっていると思われます。
首位スタートのマシュー・ウルフも、前半でデシャンボーにあっさり逆転されて追いかける展開になってしまいました。
今大会では松山英樹選手はリードとデシャンボーと同じ組で予選を戦いましたが、その中で堂々の予選通過は自信を持ってよいことだと思います。
実はメンタルが弱い
今回は勝ったわけですが、これだけ何度も優勝争いをしているわりには勝てていないという印象もあります。そして土壇場で優勝をかっさらわれるケースが多々あります。
逆に言えばそのようなメンタルだからこそ理論にこだわるわけです。私自身もそういうところがあるので「なんか出来るけどどうして出来るかはわからない」という状況を放置できません。出来ることはなぜ出来るのかを説明出来なければおかしいと考えてしまいます。そういうメンタルが努力に結びつくこともあるわけですが。
思えば昨年土壇場で逆転して渾身のガッツポーズを決めた後すぐに再逆転されたデシャンボーを見て大笑いして記事にしたものですが、今年はマシュー・ウルフに雪辱できて本人も満足しているのではないでしょうか。
今後のますますの活躍を祈念いたしまして現場からは以上です。
そういえば関係ないですけど三つ目のYoutube動画もアップしてますのでそちらもよろしくお願いいたします。