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スイングを補強すること

 上述されたこれら基本的なポイントについて確認をしていこう。

スイングの始動時における機械的な脆弱性とは、プレイヤーがバックスイングに向けてクラブを加速させ、トップに向けて静止し、ダウンスイングに向けて逆方向に加速を行う際に発生するクラブヘッドの慣性に対して、片方の手首のみで対抗することが困難になることとして既に議論されている。

しかし第六章で触れたとおり、このアクションを始動時から「ワンピース」にプレーンの中で行う事は、モデルのスイングの再現性向上のために非常に重要である。

このため、左腕一本でスイングをするプレイヤーにとっては、クラブヘッドが後方に遅れる、あるいは左腕がショルダーターンに対して後方に遅れることが容易に発生しやすい、あるいはこの問題を補填しようとするあまり腕を胸に対して急激に持ち上げる等の動作が発生し、結果としてクラブヘッドがプレーンから外れてしまうことが起きやすくなる。

モデルのスイング動作を再現するにあたってのこれら根本的な諸問題に対して、右腕および右手が、手首と上方のレバーのヒンジを引き締めることによって、スイング動作の一体感を達成することが出来る。

右腕を動作に追加することで、上方のレバーは即座に単なるレバーではなく、スイングの骨格としての機能を有するようになる。もちろんこれは厳格な骨格と言えるものではないが、仮に全ての関節がルーズな状態であるとしても(実際にはそのような事は起きないが)、両肩のピボットとの直接的なコンビネーションを伴う、ワンピースな始動のもとでバックスイングを開始することを容易にするのである。9:19:2の図を比較すれば、ハブの動作の構造が即座にその強度、信頼性を増していることが見て取れる。

9:1 左腕一本で始動をおこなう際の脆弱性

9:2 右腕が始動を安定させている

どのようなグリップがゴルフを行う際に最も有用であると考えられるかについての定義はこれ以降の章で行うが、結論を先に言えば右手はグリップの上部に位置するべきであり、いわゆるコンベンショナルなポジションのグリップが、右腕がなすべき事から考えた場合ほぼ正しいと認識せざるを得ないのである。

始動以後、クラブヘッドがバックスイングのプレーン上を持ち上げられて加速されていくことで発生する運動量は、プレイヤーの筋肉をつま先から指先まで引き上げていくことを助ける。つまりバックスイングで作られる運動量は、プレイヤーの筋肉群を完全に巻き上げられた状態までストレッチさせることになり、結果バックスイングは自然にその速度を緩め、最終的には停止することになる。

しかしこの状態に近づくとき、クラブヘッドは依然として一定の速度で動き続けており、速度を緩めようと制御しようとする左手の動作に対抗する形でその慣性を放出する。ここでもふたたび右手の援助によってプレイヤーはこの制御の動作をより安定して行う事ができるのである。 

右腕が左腕の動作に寄与すること

スイングの構造上明らかな事が一つある。左腕の動作がモデルのアクションを再現する際に直線的な上方のレバーとして働いていることは自明であるが、クラブを保持する際の人体の構造上、右腕が左腕と同様の働きをすることは不可能なのである。

左腕が上胸部を横切りながら旋回すると同時に左手首をコックしていく際、クラブのグリップエンドはアドレスの時よりもはるかに右肩に近づくことになる。よってこの基本的なモデルの動作を左腕が完遂しようとする場合。右腕はバックスイングのどこかで右肘を曲げることによって折りたたまれなければならない。

このような屈曲が行われているに関わらず、左グリップのすぐそばからつながっている右腕が、この構造全体を相当量にわたって補強していることは明らかである。

バックスイングのトップで発生する左手、左手首、および左肘に発生する緊張感は、ハブの動作がこのシステム全体をボールに向けて振り出し始める際、強制的にこれらをダウンスイングの連続する動作へと誘導する。そして右腕は再び、プレイヤーがこの強制的な動作を行う際のシステムの制御に寄与している。

しかしダウンスイングにおいて、ボールに向けたクラブヘッドの加速が行われるエリアではクラブヘッドの加速はより急激に行われるため、右腕の寄与は単にシステムの強度を増強している以上のものになる。 

クラブヘッドの速度の増加

次に左腕一本でフォワードスイングを行う場合のメカニクスについて考えてみることにする。

ハブの動作全体を前方にターンさせることによって発生するドライビングフォースはボディによって創出されているものである。後方にバックスイングされ、ダウンされ、そしてボールの付近を打ち抜いていくことによってまず上方のレバーが引き込まれ、次に下方のレバーをターンさせていく。この際プレイヤーが左腕一本のスイングに内在する脆弱性を陵駕できている限り、またトップオブバックスイングから適切なタイミング及びプレーンでスイングを開始できている限り、ボールを良いストロークで打撃出来る可能性は高くなる。

この動作を円滑に行うためのポイントを要約すれば、ボールに向けて肩および腕によるスイングが行われる際、これらはクラブヘッドを後方に残しておくことが必要となる。この状態が阻害される要因としては、プレイヤーが制御を失う事なくコックを保っておくことが身体的に難しい場合に、左手首によって制御を行おうとすることにある。同様の問題は左腕が上胸部を横切って右側に動きすぎる場合にも発生する。

この結果、フォワードスイングにおいてシステム全体が単一のユニットとしてスイングを始める事となり、モデルにおいて指摘されているストッパーが機能していない状況でリストがフルにコックされた状態となってしまう。

9:3 右腕の参加によるトップオブバックスイング安定性への寄与

しかしながらシステムの動作のスピードが上がり、ハブのドライビングフォースが向上することで、遠心力がクラブヘッドをハブの外側にスローし始める。この結果左腕は左肩のピボットと共に上胸から再び離れ始め、同時にあるいは直後に手首のアンコックが開始される。

この上下のレバーがほぼ同時に振り出されてしまうと、インパクトに向けたクラブヘッドの加速における遠心力によって、動作全体のパワーが放出されてしまう。

プレイヤーがクラブヘッドをプレーンに戻そうとする際、左手首および前腕の構造的動作を使用するために、このクラブヘッドがハブの外側に向けて加速されることは左手首のアンコックを誘発し、同時に90°のロールバックが発生する、ということはボールをスクエアにインパクトするためには何らかの努力によってこのフェースを戻してこなければならないことになる。

このような事が発生するのは、システムは常にフリースイングのモデルに同調した動作を行おうとするためである。

ここで人体のヒンジ(左手首)を使用してモデルのヒンジと代替する唯一の方法は、左前腕をアンコックと同時に旋回させることである。この前腕の旋回が発生しない場合、単純にアンコックのみが発生しプレイヤーはボールをヒールでヒットしてしまうことになり、最悪の場合左手首をねんざしてしまう。

9:4 前腕の旋回を伴わないアンコック。フェースが開いてしまいヒールでボールにヒットする、またフォロースルーで左手首をねんざする可能性がある。

よって疑いの余地なく、フリーな手首のアンコックと90°の前腕の旋回のコンビネーションによって、オートマチックにインパクトにおける正しいクラブフェースのポジションを達成することが出来る。しかしながらこれら二つの動作が正しい割合で、なおかつ暴力的なプレイヤーの操作によらず発生するためには。自然な機械的傾向が必要となる。右利きのプレイヤーであっても、左腕一本でのスイングを練習すればスライスを発生させない方法に到達するであろうし、最終的にはむしろフック傾向となるはずである。よってこの前腕の旋回動作は、多かれ少なかれアンコックの動作と自然に調和したものでなければならない。

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