自宅待機で毎日オニのように記事が更新できると思っていましたら、考えてみればもともと自営業なものでそこまで自由な時間が増えたわけでもない今日この頃ですが、なんとか生き延びて出来る事をやっていきます。

 

さて前回の続きなんですが、Athletic Motion Golfの動画で議論しようとしていることは「プロとアマ(といってもシングルのようです今回のアマは)で、ダウンスイングにおける両手の速度が最大になるポイントはどの程度異なるのか」ということです。ただし、この議論には前提としておさえておくべきポイントがいくつか存在します。

 

前提その1 二重振り子の下方のレバーに速度が伝達(レバーが加速)される際、上方のレバーには減速作用が働く

これはこのブログを定期的に読んで頂いている方はもう何度も出てきている話なのですが、SPSから図を借りてくるとこういうことになります。

緑の円盤が矢印方向に回転すると、遠心力でおもりは外側に引っ張られて、回転半径が大きくなるぶんおもりの回転速度も上がりますが、中心に近い方のレバーは後ろに引っ張られることになります。

あるいは角運動の観点から言えば、上下のレバーの角度が小さいほど(おもりが中心に近いほど)円盤を少ない力で回すことが出来る(RPMは増える)のですが、上下のレバーの間の角度が90°を超えたところから遠心力が発生しておもりが外側に膨らんでいくと、角運動の質量が増加するために円盤を回しにくくなる作用が働きます。この運動量の転換で下のレバー、つまりおもりは加速を得られますが、TGMではこのことをリリースと定義しています。

話を単純化すると、この構造体では上下のレバーの角度が90°を超えたところがリリースの開始点になります。で、リリースが始まると上方のレバーが遅くなるということは、ハンドスピードのMAXポイントはリリースの開始直前になると考えられます。

 

前提その2 棒で何かを「打とう」とする場合、人間は本能的に上下のレバーを直角の関係にしたがる

一方で、ゴルフ以外の多くのスポーツでは、何かを棒でひっぱたこうとする場合、あまり顕著なリリースを伴わないことが普通です。例えば野球では

テニスでは

薪割りでは

まぁこれグリップによっても変わりますし、常に完全に直角とは言えないかもなのですが、ここで重要なことは、「人間は道具を使うとしても、本能的にはインパクトでハンドスピードを最大にしたいと考える生き物」だということです。で、前提その1が正しいとすると、それはリリースゼロの状態、すなわち腕と道具が90°の関係になっている事が望ましいと考えられます。

ゴルフの場合、どう見ても道具と腕の角度が最大化した時点より「リリース」を発生させながら打っています。もし普通のスポーツのようにリリーすを極力抑えて打ちに行く場合、それだとボールに届かないので「突っ込む」「フェースが返って来ないでスライス」などが発生して、まさに「打ちに行く」状態になります。なので初心者が大スライスするのはむしろ正常な運動能力の証なのですね。

というわけで上記をふまえ本題の動画を見ていきます。動画のお題はシンプルに「クラブヘッドスピードを上げるには」です。

今回もGEARSでの測定をもとに、プロとアマの違いがどこにあるのかを見ていきます。ただし今回のアマはシングルハンデなので上級者だと思うのですが、今ひとつ自分の飛距離に不満があるようです。まずみていく指標は三つです。

一つ目は左手とクラブシャフトの間の角度ダウンスイング開始時点では100°ちょっとでまずまず理想的な値です。

二つ目は、両手の速度が最大になったポイントと、その時点での左腕とシャフトの角度です。

アマはこの位置が手の速度最大で、そのとき左腕シャフトの角度は131°ちょっとでした。つまりダウン開始からこの時点までで、約31°角度が増加したことになります。この時点の両手の速度は21MPH(時速33.6km/h)でした。これはかなり良い数字です。

そしてこれがインパクト時になると、ヘッドスピードは82MPH(HS 36.4m/s)になりました。確かに物足りない数字です。ちなみに左腕とシャフトの角度は162°ちょっとでした。

一方こちらはプロです。今回はより比較をしやすくするためこのアマに非常に似通った身体的特徴を持つプロを選びました。ダウン開始時の左腕とシャフトの角度は90°ちょっとです。

プロもわずかに角度が増加しつつダウンが進んでいきますが、プロのハンドスピードのMAXはこの地点になります。実はその速度はアマと同じくらいなのですが、到達地点がアマよりはるかに速い事がわかります。またその間左腕とシャフトの角度は14°しか増加していません。

そしてインパクト時点では、H/Sが87MPH(38.6m/s)ということで、同じハンドスピードでも5マイルものH/Sの差が生じています。ちなみにこのときの左腕とクラブシャフトの角度は154°でした。

両者を並べて比較すると、ハンドスピードが最大になるポイントにこのような違いがあることがわかります。またその時点のクラブヘッドの位置を見てみると、プロの方がアマよりもはるかに長くヘッドを加速させる余地があることがわかります。

また同じハンドスピードの別の選手との比較を見てみます。この選手はフロートローディングという、ダウンの初期で左腕とシャフトの角度を減少させるテクニックを使っています。結果この選手はハンドスピード最大時点で、ダウン開始時よりも角度が5°減少に転じています。

これがインパクト時のH/Sにどう現れるかというと

なんと8マイルもの差になって表れます。同じハンドスピードであっても最終的なH/Sが10%以上変わってくることになります。

実は前提その1をもう一度よく考えれば、このアマはダウンの早期でのリリース量が大きいということは、それを動かすためにはより大きな角運動量が必要になるので、適正な左腕とシャフトの角度を保ってダウンが出来ればハンドスピードはもっと上げられるはずです。ではハンドスピードが24MPHくらいのプロと比較するとどうなるかというと

なんとこのプロはH/Sが100マイルです。もしこのアマが効率的なクラブの動かし方を覚えたならば、全く同じ筋力でも2割もH/Sが上がる可能性があるということになります。

この動画の結論としては

「ハンドスピードに関わらず、とにかくその最高速度を早い時点で達成したほうがヘッドスピードは上がる」

ということなります。それもけっこう大幅に上がる可能性があるということです。

このアマが何を考えてスイングしているかというと

「両手をトップの位置の高さに保ち、両腕から振りに行かず(両腕を受動的に使い)、ボディローテーションを強くする」という、一見正しいコンセプトに見えることなのですが、これ全て早期のハンドスピードの確立に向けては逆効果になります。

こうしたボディローテーション主導という考え方はほとんどの場合、アウトサイドイン軌道を生み出します。

というわけでこの問題点を説明して、このアマにレッスンを受けてもらいました。アドバイスは非常にシンプルで、「グリップを早期に早く動かせ(Sooner, Faster)」です。するとどうなったかというと、まずハンドスピードの最高速地点が以下のように変わりました。

結果このドリルに数分取り組んだだけで、なんと6マイルもヘッドスピードが上がったのです。

注目して欲しいのは、左腕とシャフトの角度がハンドスピード最高速度地点で、14°も角度が減少しています。ただし、これを腕力で達成しようとしては絶対にいけません。この角度はグリップを早く動かした結果として出来るものであって、意識的な操作でこの角度を作ろうとするのは間違いです。

動画終わり

 

というわけで、「エイミングポイントバッティング打法 with ハブ意識」がどうやら理論的に間違っていないことが証明されたと言って良いと思います。どういうわけかわかりますでしょうか。

 

日本ゴルフ界のためにもう少し説明を続けたいと思いますが今日はこの辺で。

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