なにやらデシャンボーからみで多少サイトのアクセスが伸びている気がしますが、平常運転でアーネスト・ジョーンズを進めていきます。前回の文章はこちらです。

 

私がここでこのコメントを引用したのは、今いちど他のプレイヤーのクセやスタイルを 模倣しようとすることの愚かさを強調したかったからである。フォームはそれ単体で、パフォーマンスの再現性を構築していくのに有用なものである。言うまでもなく、フォームの完成度が高いほど、得られる結果の再現性も向上する。しかしいかなる場合においても、ゴルフストロークを行っている他者の外見上のアクションを模倣しようとする試みは、其の他者が実際に体験しているアクションの感覚を発見することには何ら寄与するものではない。

では上級者のアクションを見ることで、いったいどのようなメリットを享受できるというのか、あるいはその上級者がプレイをしているときに、その何を見ておくべきなのかについて触れておこうと思う。通常、私がレッスンをしに出かけるときは、ボビー・ジョーンズのストロークの連続写真の載った小さな冊子を携えている。この冊子をパラパラ漫画のようにしてみせることで、彼のストロークの一部始終を動画のようにして見せることができるようになっている。私がこれを生徒に見せる時は、必ず彼のボディの細部の動きに注目するのではなく、クラブヘッドの動きに注目して見るように生徒には告げている。そうすると生徒達はほぼ例外なく、そのクラブヘッドの動きが、あたかも糸に吊されたおもりのようなアクションであることを感じ取ることができる。つまり、その動きは、終始一貫してほぼ現実に達成可能な範囲では最も完璧に近い「スイング」のアクションであるということだ。

ここに上級者のプレイを実際に間近で見ることの意義があると私は思っている。クラブヘッドの一定のリズムの動作を観測する、あるいはそれを行うための、ストローク中における両手のアクションについて注目する。重要な事は、その動作の映像を全体像として記憶するということであり、そこにおける一つ一つの細部の特徴や、ストロークの進行過程における個々のポジションといったものを取り上げようとすることを避けることだ。両手はクラブを保持し、制御する。両手の動きはクラブヘッドをスイングしようというアイデアを中核として統御されているのであって、それに付随するボディ、両足、あるいはその他の器官の動作は、常にそのアイデアに対して反応している存在でなければならない。

また私は、ある特定の練習やドリルについても、そこにどのような価値があるのかは別として、耳障りの良い呼称などとともに行われることは必要としない方が良いと考えている。単純に何らかのモーションを達成するということそれ自体は、本人がその動作に「スイング」のアクションの意味を内包している確証がないのであれば意味をなさない。もしこのことに不安を感じた場合は、もう一度はじめからやり直すことが最も良い対応である。すなわち、あまりボディのターンを必要としないショートストロークの練習を行い、クラブヘッドの動きを感覚として取り戻すことが出来るまでそれを続けることだ。そして次第にアクションの幅を大きくしていくことだ。あるいは要すれば、先端におもりをつけたヒモを小さな弧でゆらしてみるという、本書の前半の章で推奨されていた方法で、スイングというものがどのような状態であり、どうすればその状態になるのかについて再確認してみるのいいだろう。

ひとたびスイングというものを感覚として識別出来るようになれば、それ以降もそれが発生している状態を認識出来るようにはなるだろうが、そのことはラウンド中あるいは練習中にクラブを振るときにいつでもスムースにスイングできるようになったということと同義ではない。しばらくプレイから離れていて、復帰して最初にゴルフクラブを振ろうとするとき、おそらく誰もがそこに難しさを感じるはずだ。逆にいえば、ほんの2〜3週間試合から離れていたという程度であれば、再開後に感覚を取り戻すことも容易になる。

上記のことを示すエピソードとしては、ヴァージニア・ヴァン・ウィー(訳者注:アーネスト・ジョーンズに師事していた女性ゴルファーであり、1920年代から1930年代にかけて活躍した。1950年世界ゴルフ殿堂入り)が数年前に話してくれた彼女の経験談がある。彼女がウィットマーシュバレーカントリーで10月に行われた全米選手権に優勝する前、彼女はその年の1月までまったくゴルフをしていなかった。その前の秋頃まで、彼女はひたすらテニス(前にも述べたようにテニスというのはそのストロークに素早くてシャープなヒッティングの動作を必要とする)のプレイに熱心に取り組んでいたという。彼女がゴルフを再開したとき、最初のラウンドのスコアは95だった。それから数日間、「スイング」の感性を取り戻すためのルーティンに取り組み、二回目のラウンドでは86をマークした。そしてその二日後の三回目のラウンドでは、79をマークしたのだが、つまり復帰後の最初のラウンドと比較すれば、ほぼ1ホールに1打だけスコアを縮めたということになる。この間に、私が彼女に全てのレッスンやトレーニングを通じてしたことといえば、クラブヘッドのアクションのフィーリングを取り戻すことに専念させただけである。

もしこのシンプルな施策が、彼女にとって数々の大会を優勝するのに充分なものであったとしたら、彼女より技術に劣るプレイヤー諸君にとっては、より注意深くこのことに取り組んでみることが推奨されるべきではないだろうか。

例によって写真は本文の内容と関係ありません。すっかり秋ですね。

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