デシャンボーが勝ちびびりしてパトリック・リードに優勝かっさらわれたりとか書きたい事は山ほどあるのですが、とりあえず今回はGEARS動画の翻訳レビューです。今後レビューしていくのは基本的には以下「Athrletic Motion Golf」というyoutube動画チャンネルになります。

小さい方のショーン君はPGAプロで、大きい方のマイク君は元バスケの選手で運動力学分野の方らしいです。で、この人達の施設にはGEARSはもちろん、トラックマン、スイングカタリスト(足裏の荷重を計測する機械)などおよそ現代に備えうる最高の設備がそろった状態でスイングの解析を行っています。ショーン君は「JACOB 3D」というGEARSの解析ソフトの開発者との共著もあるようなので、GEARS解析に関してはこの人達が世界の第一人者と考えて良いでしょう。

で、まず第一回に紹介したいのはこの動画です。

まずこの「ヒップをクリアにする(Clearing The Hips)」という言葉ですが、TGMにはやたらしつこく出てくる表現です。巻末の索引で調べてもなんと四回も登場しています。ちなみにTGMは「同じ事を何度も書いてるとコンパクトにまとまらないのでなるべく避ける」というポリシーのもと、異様に他所参照の多い書物なのですが、そのTGMで何度も出てくるということはたぶん重要なことなのですね。

というわけで「ヒップ クリア ゴルフ」検索しますとなぜかこのブログが一番上に出てしまうので、これが日本ゴルフ界ではほぼ使用されていない言葉であることがわかります。まぁ「フラットレフトリスト」とかもそうなんですが、こういう言葉って結構あるのではないかと思います。

で、「Hip Clear Golf」で検索すると、「How to Clear Your Hip」みたいな動画がエラい数出てきますので、英語圏ではかなり重要な用語であることがわかります。

簡単に言えば、ストロークを行う過程で下半身のエネルギーを上半身、ひいてはクラブに伝えるためにヒップのアクションが必須になるのですが、その際に「絶対に両手の通り道を潰すなよ(おしりが邪魔にならないようにしっかりと空間を確保しておけよ)」というのが「クリア」という言葉になります。クリアランスって言えばわかる人はニュアンスがわかるかもです。

AMGの動画では基本的にはあるテーマを決めて、それがプロとアマでどのように異なっているのかを比較して分析します。このプロは、聞いたところによると30人くらいのPGAのツアープロの平均値でつくったアバターで、アマの方はよくわかりませんがおそらく典型的なアマチュアの平均値アバターなのだと思います。

アマチュアのヒップの動き

このように真上から見まして、アドレス時点のおしりの頂点を結んだのが黄色い線になります。

で、これがトップでここまでは問題ないように思えるのですが

もうハーフウェイダウンの時点でこんなに骨盤が前方にせり出しています。

インパクトはこんな感じ。つまりアドレス時点よりこれだけボールに近づいていることになります。アドレスで後傾が強すぎるのでもない限り、両腕を振るスペースがせまくなって「つまる」インパクトになりやすいでしょうし、最悪シャンクもあり得るでしょう。で、このときの左右の股関節に着目すると

アマはトップに向けて、ヒップターンを意識するあまりテークバックで思い切り左股関節が前方にせり出して、ダウンからインパクトに向けてその位置に右股関節を持ってくるようなターンになってしまう傾向が強くなります。水色の十字の位置を見ればわかるとおり、これでは相当下半身がボール方向に近寄ってインパクトを迎えていることになります。これで ボールに当たるとすると、ものすごく窮屈な状態を作ってボディに極端に近いところに両腕を通す、あるいは上半身の後傾を強くして(前傾をといて)両腕の通り道を確保するしかありません。実は上記のようなテークバックをする事で、頭部の後方へのスウェーも発生しやすいのですが、それはまた別の動画で説明します。

プロの動き

アマとは違い、右のヒップを後ろに引いていくようにテークバックが開始され、次にその右ヒップの位置をキープしたまま、ダウンに向けて左ヒップを後ろに引いていくように動かしています。これを後方から見ると、例えばアドレス時点のヒップ位置にガラスの板を張り付けるようにすると

終始ヒップはアドレス時点より、ボールから遠ざかる位置を動いていくことがわかります。アマと同様に左右の股関節の動作のシーケンスを確認すると、

インパクトに向けてプロは思い切り左にヒップを飛球方向およびボールから遠ざかる方向に動かしています。これは左脚をボールから遠ざかるように伸ばしていくことで生まれます。

結果として骨盤の中心も、飛球方向およびわずかにボールと反対方向に動いていきます。

両者を比較すると面白いのは、実はヒップの純粋なターン量は、実はアマの方が多いということです。おそらくプロは、そのぶん上半身の捻転を多くすることでパワーを貯めているということだと思います。よって、ヒップターンの量を制限すれば良いというものではないにせよ、無制限にターンさせようというのはあまり良いアイデアではないと思われます。どういうヒップの動かし方をしたときに最大のパワーが生まれるかを考えてアクションを作っていく必要がありそうです。

結論

プロの動きを再現するのであれば、ヒップの動かし方は

・まず右ヒップを背中方向に引く

・右ヒップの位置はそのままで、左ヒップを思い切り背中方向に動かす

・上記を意識すると、トップから左脚を蹴って左ヒップを背中方向に動かす

みたいな感じになります。これはおそらく練習場でスマホで簡単に確認はできると思います。

後方から見て、ケツの後ろの景色がずっと見えなければいいわけですので、確認は簡単です。ただこれがやってみると激ムズなのは、この動作を頭部を動かさずに行うには、想像以上にサイドベンドを入れないと不可能なのです。ただこれが出来るほどフィニッシュに向けての動きがスムースになるので、真剣にゴルフに取り組むのであれば試してみるべきだと思います。

この「ヒップをクリア」の目的は、あくまで両腕が気持ち良く振り抜ける空間の確保です。結果的に飛距離に結びつくとしても、それは副次的な効能です。くれぐれも飛距離のためにクリアすべきスペースを潰してしまわないことが重要と思われます。ここに特定の日本人選手の画像を上げることはいたしませんが、日本人プロは結構これが出来ていない選手が多いように見受けられます。具体的にはインパクトの瞬間に赤線とヒップの間に空間が出来やすいです。筋力や体型の問題ではなく、単純に「知識」の問題で改善できると思われますので、指導者の方はよかったら気をつけるようにしてみていただけると良いことがあるかも知れません。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事