「リズム」および「タイミング」という言葉は、ゴルフのスイング、それも「良い」スイングを形容する際に使用されることが多く、実際に本書でもそのようにこれらの言葉を使ってきた。従い、我々がこれらの言葉の意味するところを明確にすることで、同様に良いスイングの本質を理解することにつながるはずである。

 

「タイミング」とは、ダウンスイングにおいて投入される労力の総量から得られる最大限のクラブヘッドスピードを達成できるよう、一連のアクションを調整することを指す。悪いタイミングとは、そうした努力が効率的に行われていない状況を指し、例えば運動の順序が間違っている、あるいはその運動連鎖のどこかに「たるみ」が発生したために投入された労力が浪費されてしまう、またあまり一般的とは言えないケースではリストアクションが後方に待機している時間が長すぎるなどの原因が考えられる。いずれの場合においても、クラブヘッドが本来達成できるはずの速度に達することはないか、少なくともスイングの正しいポイントにおいて到達することはなくなる。

 

タイミングの善し悪しの違いは、手のアクション、すなわちモデルの「ヒンジ」部分において、他のあらゆるシステムのなかでも最も顕著となるが、どの場所で「悪い」タイミングが発生しようともゴルフをプレイする上での効率性を低減することは確かである。

 

「リズム」はよりあいまいな言葉である。リズムはタイミングと密接な関係にあり、実質的にタイミングを包含するものであると言える。しかしリズムとはより具体的には、それは行って帰る、つまりバックスイングとフォワードスイングにおいてメトロノームのようなパターンを作っているものであり、スムースで精密に意図されたバックスイングがビルドアップされた後、適切なタイミングに調整されたフォワードスイングが形成されていることを指している。

 

しかしこれは程度の差こそあれ、個人の経験的主観に基づく議論であり、そのためゴルフスイングにおける客観的な議論という側面からは限定的な意味しか持たないかもしれない。それにも関わらず、プレイヤー個々がこのリズムと言う課題に対して非常に多くのアイデアを有していることは、スイングの広範な輪郭について何かを伝えるための有効な概念である可能性はある。

 

例えば、高ハンデのプレイヤーが、プロのトーナメントを観戦しただけで、グリップやスタンス、あるいは左腕の伸ばし方など特定の何かについて学んだわけでもないのにプレイが改善されるということが起きるのは、良いスイングの全体的なリズムについて明確なイメージを持つに至ったからである。

 

バランスと遠心力

「リズム感のあるスイング」というものはその定義が難しいものではある一方、有る特定の要件を備えている場合が多い。本書でまだ言及していないその要件の一つはバランスである。静的なバランスだけではなく、スイングシステム全体における動的なバランスも含まれる。

 

「物体間に相互にはたらく作用と反作用は、大きさが等しく、また向きが反対となる」とは、ニュートンの運動の第三法則であるが、この法則はゴルファーの身体、手足、クラブにも、また学校の実験台にあるおもり、バネ、釣り台にも等しく当てはまる。たとえば、クラブヘッドをスピードアップするために必要な右腕によるプッシュ(第9章)は、上腕の筋肉の作用によって肘関節をまっすぐにすることによって達成されている。しかし同時にこの動作は肩も動かしているのであり、あるいはその動作を安定させるためにさらに多くの筋肉の働きを必要とするかも知れないなど、いずれの場合でもどこかの筋肉が動くということは、それによって発生する振動などを抑止する他の筋肉の作用も必要になるのである。こうした作用と反作用、あるいは動作とそれに対するカウンター動作などからなる複雑なシステムは、全体としては最終的にゴルファーの両足によって受け止められなければならない。

この際このゴルファーが対応しなければならない最も大きなフォースは、ボディアクションによって蓄積された運動エネルギーをクラブヘッドに向けて解き放つのに使用される遠心力である。この原則に従い、人が何かをスイングする際には、同時にカウンターバランスとなる作用を発生させている。月が地球の周りを周回する際、逆に言えば地球が月の周りを周回しているとも言えるが、(これら二つの物体トータルの重心を基準にすれば)小さい物体の方が常に広く、大きな軌道で周回することとなる。

同じことがゴルファーとクラブヘッドの間で常に起きている。クラブヘッドがスイングされる際、クラブヘッドには遠心力が発生する。従い、クラブヘッドは、ゴルファーのグリップ及びシャフトによって円弧を描き続けようとするのではなく、全ての瞬間において真っ直ぐに飛んでいこうとするため、ゴルファーの両手を引っ張ろうとする力を発生させている。この力は、スイングの最下部の0.1秒の間に、およそ最大100ポンド(45.3kg)にまで達する。これはこの力に対抗するために、ゴルファーが両手、両腕、あるいはボディ全体で引っ張り返さなければならないことをはっきりと知覚するのに充分な力であると言える。

つまりゴルファーは、自分の周りでクラブヘッドをスイングする際、同時にクラブヘッドの周りで自分をスイングしていることになる。これら二つの物体の総重量の重心は、ゴルファーの胸の上部の当たりに存在する。そのため見た目上はクラブヘッドだけがスイングされているように見える。(この点をより理解するにあたって、ゴルファーとハンマー投げの選手を比べてみて欲しい。ハンマー投げの選手とハンマーの回転関係の中心は、ゴルファーのそれよりも外側、つまり伸ばされた両腕の肘の付近になることがわかるはずだ。)

 

ゴルファーとはスイングするカウンターバランスである

ゴルファーのボディには、スイングによって発生する遠心力に対してのカウンターバランスの効果が発生するが、優れたゴルファーはこれによってスイングアクションのバランスおよび安定を確保することが可能となる。

このことは疑いなく良いコーディネイトの要素であり、リズム及びタイミングの確固たる基盤となるものである。これこそがゴルフで言うところの「スイング」がまさに意味するところである。すなわち、二つの質量が違いに引っ張り合っているということである。

実際にゴルフにおいて、ゴルファーは門を蝶番の部分から開閉するようにクラブをスイングすることが出来るわけではない。ゴルファーは堅固かつ不動の門柱とは異なる。ゴルファーは存在するあらゆる動作に対してバランスを取りながら揺れる存在である。よっていつでも顔を横に向けたり、後に寄りかかったりすることができる存在である。

クラブによって発生する遠心力は、ゴルファーが反応しなければならない数多くのフォースの一つであるため、単に「エネルギーの効率的な伝達」を達成するだけではなく、現実的にはリズムやタイミングを達成することに重点を置く必要がある。エネルギーあるいは運動量の伝達が行われる際はいつでも、身体の各部分の間に発生する相互作用によって、各フォースや動作のバランスを取る必要がある。決して堅固とは言えない条件のなか、ゴルファーがどのように最大限のパワーを発生させ、その一方で効率的なバランスを確保するかといった調整能力が、そのプレイヤーのゴルフの良否を大部分決定しているのである。

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