ハブのアクションに対するスタンスの貢献

これまで我々は、ゴルファーが使用している動作のシーケンスの全てはその両足に懸かっていると述べてきた。これはそのゴルファーのスタンスにおける全ての問題、つまりどのように両足を置くのかということが、クラブをスイングするためのパワーを生み出す方法と密接に関係していることを意味している。

スタンスの目的は、どのようなショットにおいても、クラブヘッドをスイングしてボールを打ち抜いていくことを最も実用的かつ効率的に行うこと意図する上で、2レバーシステムのアクションのアプローチアングル及びタイミングの観点から、ハブアクションのスイングを可能な限り確実なものとするための足掛かりとすることである。

スタンスの特定の手法について独善的にその有効性を主張する根拠というものは多くない。たとえば、ある優れたプレーヤーは、足を揃えて立っていても、または足を組んでいる、あるいは片足立ちの場合でさえも、200 ヤード以上のドライブが可能なのである。

ただし、他の条件が同じであれば、すべてのプレーヤーを普遍的に支配する基本的な原則はいくつか存在する。

ひとつは、極端すぎるスタンスはゲームを難しくするということだ。両足の間隔が広すぎると、パワーを生み出すシーケンスにおいて腰を使用することの自由度が制限されてしまう。腰をしっかりと回転させる、または両脚のアクションによって上下に強いプッシュを発生させることで腰を傾ける、また元に戻すといったことが制限されるのである。つま先を極端に内側または外側に向けたスタンスでも同様のことが言える。

両足の間隔が近すぎるスタンスでは、股関節と胴体下部の横方向の動きを生み出すための動力源としてのレッグドライブを最大限に活用することが出来ない。本来この動作は、ピボットがしっかりと安定した状態であれば、両腕とクラブの強力な回転運動に転換する事が可能なのだ。

片足またはもう一方の足を大きく後に引いたスタンスは、ゴルファーがハブをターゲットに合わせてスイングするのを困難にさせる可能性がある。このようにした方が個人的には良いボールが出るということはあるかも知れないが、ゴルファーのピボットを完全に行うには、やはりバックスイングのトップにおけるハブの向きは目標方向に真っ直ぐかつオンプレーンに保つ必要があるだろうし、あるいは100ヤードを精密に打っていくような状況では、ピボットの自由度を制限するとしても全体のアクションをそのシーケンス内にキープする必要が出てくるのである。

この場合でも、スタンスの足の向きは各プレイヤーによってまちまちである。例えばベン・ホーガンは右足のスタンスの向きを、ターゲットに対して垂直に構えることで、ボールに対してバックスイングおよびフォワードスイングにおいて緩みが発生することを防ぐ効果をあげてきた。しかしホーガンとは異なる脚や腰の関節、あるいはよりしなやかな構造の筋肉群を持つプレイヤーにとっては、明かに異なる角度のスタンスからストロークを開始する必要がある。

また男性でも女性でも、歩いているときの足の向きが、スタンスおけるベストな足の開き具合についての兆候を示していることは事実である。

スタンスはモデルのスイングを多才にする

今ひとつ確かなことは、ショットのスタンスは、その際のライと、プレーヤーがプ意図するストロークのタイプによって変化する必要があるということである。

良いゲームをプレイするには、ゴルファーはスタンスとスイングの両方をさまざまなストロークタイプとライの要求にどのように適応させるかについて多くの引き出しを持っていることが求められる。

完璧かつ柔軟にスイングする事が可能かつ、モデルのあらゆるタイプのストロークを行うことが可能なロボットがあるとしても。ショットが可能になるのはそのライに相応しくデザインされた場合に限られる。そうした機械がゴルフにというゲームにおいて日常的に発生する課題とその解決に取り組むことは困難であり、こうした困難こそがゴルファーの愉しみや興味、あるいはゲームへの意欲と興奮を作り出しているのである。

スタンスの要約

要約すれば、全ての科学的知見がスタンスについて強調出来ることは、ボールを貫いていく2レバーシステムの開放というスイングの最終成果のために、スタンスは常に、パワーを発生させるシーケンスにおいて、タイトで、バランスの取れた、調整された状態、かつスイングのハブのアクションの方向性を確保する目的のために貢献するものでなければならない。

当然我々は、世界最高のゴルファー達がすべてのショットで使用したすべてのスタンスを統計的に分析することも可能である。この分析によって実用における正確な平均値を算出することは可能であるが、しかし実際にこの数値でプレイをしている者は10人に1人かもしれない平均的なイメージに過ぎない。

14人のトッププロの統計によれば、ドライバーを打つ際、つま先を結んだラインが目標に対してスクエア(オープンでもクローズでもないスタンス)なとき、つま先の間の距離は24.5インチで、左つま先から3.5インチボールが内側に入った状況でスタンスラインとボー^ルの距離は33インチであった。ゴルファーの身長と、スタンスの広さ、ボールとの距離、あるいはスタンスがオープンであるかクローズであるかとスライスかフックかなどについての相関関係は見いだすことができなかった。

14:1 トッププロ14人がドライバーを10球ずつ打ったときのスタンス位置の平均スタンス。「平均」モデルのつま先を結んだラインは目標ラインに対して完全に平行であるが、個々のプレイヤーで見れば、2.5インチ「オープン」なプレイヤーから1.5インチ「クローズド」なプレイヤーまでの分布があった。

これら高度に熟練したプレイヤー達のスタンスに関しての重要な結論は、良いプレイヤーと未熟なプレイヤーのスタンスにおける主な違いは、良いプレイヤーのスタンスには再現性があるということである。ショットを繰り返しても、熟練したゴルファーはほぼ同じ位置にスタンスを取ることができるのである。

14:2 プロゴルファーのスタンスにおける再現性。アマチュアとプロゴルファーに10球ずつドライバーを打ってもらった際のスタンス位置のトレースである。ハンデ24のプレイヤーのスタンスは、プロのそれと比べてバラバラであることがわかる。よってストロークを開始する前から、このプレイヤーが再現性のあるスイングを行うことを困難にしているのである。

スタンスと範囲、またシーケンスの精密性

ここまでで明らかになった事柄は、一般的なティーチングとどのように結びついているのだろうか。例えば、ドライバーからウェッジまでクラブが変化していく中で、スタンスが少しずつオープンになり、また右脚がボールに近づいていくのはなぜだろうか。とりわけショートアプローチの部類のショットに距離が短くなるときにこれを行うのはなぜだろうか。

おそらくこの教えは、クラブヘッドの軌道をボールに合わせていく中で、ボディの動作のシーケンスをタイトに保つ必要性についての科学的根拠にフィットしたものであるはずだ。クラブの長さが短くなるにつれて、少しずつスタンスをオープンにすることで、バックスイングおよびダウンスイングの緩みを少なくさせることが可能となる。このことはクラブが短くなるにつれてフルパワーのバックスイングの必要性が次第に減少し、ストロークのレンジが短くなるほど再現性と精密性をともなうアライメントとボールストライキングが必要となることと関連がある。

繰り返しになるが、クラブが短くなるにつれて、クラブヘッドは、より低いヘッドスピードで、またよりスティープな軌道でボールコンタクトするように調整される必要があるが、これは、ロフトの寝ているクラブフェースで芝からボールを​​クリーンに打つという純粋に実用的な理由による

緩みのないシーケンス、足の配置、およびスタンスを開き両足の間隔を近づけることで、プレーヤーはボールをより自由に、直接ホールに向かってスイングできるようになるという両方の事実に関係している。

 

オープンまたはクローズに立つ際の基本的なガイドは以下のようであると考えられる。

オープンスタンスは、プレーヤーにバックスイングとダウンスイングでよりタイトなシーケンスを与えるが、ホールに向かってより直接的にスイングをする自由度を高くする。

クローズド スタンスは、バックスイングにより大きな自由を与え、最大のパワーを生み出すことが可能となる。しかし同時に、フォロースルーでのプレイヤーの体の動きの自由度を低下させる。そして、スタンスが非常に閉じている場合、この自由の欠如は、ボールに到達する前に影響を及ぼす。すなわちバックスイングでの過度な自由度と相まって、これはシステムに「緩み」をもたらし、パワーの損失を引き起こす可能性を発生させる。

 

極端に閉じたスタンスから 20 ヤードのピッチでプレーしようとすると、誰もがこの「緩み」を顕著に感じ取ることができる。バックスイングを行う際にボディから何の抵抗も感じることなく、自由かつ無力にスイングをする感覚は両腕にとってかなり顕著なものとなるが、同時にダウンスイングの始動に何の助力も得られないことを意味する。

ほとんどのゴルファーは、オープンに立つとスライスになり、クローズに立つとフックになると信じているが、実際これには多くの妥当な論理が存在する。肩のラインと、ハブのプレーンが両足のラインに沿っている場合、クラブヘッドがボールに近づくと、クラブヘッドは確実にターゲットラインをクロスしていくことになる。よってスタンスがオープンであればアウトトゥインになり、クローズであればイン トゥアウトとなる。この際にクラブフェースが目標に対してスクエアなままであれば、意図してスライスまたはフックを発生させることが可能となるはずだ。

ただし、その議論には多くの「if」が存在する。実際には、スタンスを大幅に変更すると、ショットに対する考え方が大きく変わり、それによって実際のショットの取り方も変わってしまうため、ハブの動きが足のラインに沿わなくなる可能性があり、結果クラブフェースが目標に対して直角にならない場合があり得る。つまり、オープンまたはクローズに立った際の全体的な影響を予測することは事実上不可能なのである。

チームが実行できた実験を通じて唯一確認出来たことは以下である。すなわち、ゴルファー群の足の位置を注意深く観察した結果、オープンスタンスのゴルファーは、クローズスタンスのゴルファーよりもスライスするという傾向を示さなかったということだ。

現実には、通常よりもオープンに立つということは、ゴルファーがスライスを発生させるために必要ないくつかのこと (例えば、手の動きなど) を行う機会がいくらか増えるという程度であり、確実に自動的なスライスの発生を保証するものではないのである。またクローズドスタンスとフックの関係も同様だった。

よって我々が推奨できるのは、どの程度開く、あるいは閉じるのか、スタンス幅、ボールからの距離など、いずれの要素においても極端なスタンスを避けることである。そうした行為は、パワーと再現性の損失につながることは事実だ。一方でそれとは別に、ゴルファーは最適なスタンスについて実験することを恐れるべきではない。実地の経験によってのみ、どのプレーヤーも自分にとって最適のスタンスと、そこからのバリエーションのそのゴルファー (あるいはそのゴルファーだけ) への影響、特に、どのバリエーションが特定のショットに対処するのに役立つかを見つけることが可能になる。

通常の状況では、ハブのアクションがオンターゲット平面で発生することを最も積極的に促進するスタンスが、個々のゴルファーにとって最良のスタンスと言える。

もしプレイヤーがこれを見つけたならば、少なくともすべての一般的なショットでは、一貫してそのスタンスを実行することに特に注意を払うことだ。ゴルフのラウンドでは、そのようなショットが多くあり (たとえば、ほぼすべてのティーショット)、平均的なゴルファーが最もそうした注意を怠っているか、知らず知らずのうちにそのような状況に落ちいって、なぜ良いゲームから離れてしまうのかを悩むことになるのだ。

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