第八章 インパクトを通じた左腕によるフォワードスイング

ここでは、これまで見てきた左腕のみのプレイヤーによるクラブのフォワードスイングについての分析を進めていく。この左腕一本のスイングは、ゴルファーがモデルの基本的なインパクトを通じた2レバースイングを再現しようとする中で、最も単純な本質的構造と言える。

前章で説明されたように、このスイングにおける主たるパワーは、両脚、両ヒップ、体幹、そして胸部や背中の大きな筋肉群の順番で伝達されている。これらは全てモデルで表現するところのゴルファーのある「パーツ」を動かすために集約される。すなわち「上方のレバー」である、両肩、腕、手の各動作、そして「下方のレバー」であるクラブの動作である。モデルの主たるパワーの源は中心を伴うピボットの周りを旋回する上方のレバーによってもたらされている一方、より詳細なレベルに進み、モデルにおいて左腕の基本的な動作をゴルファーがどのようにフィットさせているのかについて探求をしていきたい。

モデルの再現

インパクトを通じたモデルのフォワードスイングを再現するために、ゴルファーは以下のことを行わなければならない。

1. バックスイングの終了と共に、ゴルファーはターゲットに向けてインプレーンな、上方のレバーに属する機構のスイングを開始しなければならない。そしてそれらを「中心を伴うピボット」で同一プレーン上をターゲットに向けて可能な限りパワフルに加速させなければならない。これを人間のゴルファーに置き換えた際に最も簡易な表現にするとすればどうなるか、またその度合いはいかなるものであろうか。要はターゲット方向に狙いを付けているプレーン上で「中心を伴ったピボット」の周りで両手をスイングするということである。これが左腕一本によるスイング、すなわちプレーン上で左手をスイングする動作であれば、左腕を左肩が上方のレバーとして機能する限り、モデルとの相違はほとんどないと言える。

2. 次にゴルファーは、ターゲット方向に狙いを付けられているプレーン上のままで、クラブヘッドがボールを貫通して振り出されるようにしなければならない。ここで手のスイングのプレーンとクラブヘッドのプレーンが必ずしも同一にならないのは、ゴルファーにとって、ボールを打撃する際後方から見てクラブと左腕が完全に一直線になるようにグリップすることは気持ちの良いものではないからである。しかしこれら手とクラブヘッドの二つのプレーンがターゲットに向けてスイングされる際の相違は、わずかにその角度が異なっているのみで、その狙っている方向については完全に同一なのである。よってしばしば議論の対象となることであるが、モデルが行っているのと同様に狙っている方向が同一なのであれば、それらはシングルプレーン上と認識して差し支えないであろう。

f:id:kellogg2005:20190625132518p:plain

8:1 クラブシャフトと左腕は通常一直線にはならない。つまりクラブヘッドがスイングされるプレーンは両手が動かされるプレーンよりやや異なる角度で傾いている。しかしながらそれら各プレーンの向いている方向が同じなのであれば、これらをシングルプレーン上であると見なしてよいと思われる。写真のゴルファーはトニー・グラブである。

「まぁ別におれは左腕とシャフト一直線で打てるけどな」

f:id:kellogg2005:20190625133043p:plain

https://www.instagram.com/p/BzEzWD0BSGi/

3. 次に活用可能な全てのパワーを、左手首のヒンジが純粋に下方のレバーが自然に振り出されるようアシストすることを、「自然な」タイミングのシーケンスで行わなくてはならない。左腕一本によるスイングでは、左手のヒンジに活用出来るパワーというものはごく些少であり、そのため左腕一本でスイングを行うゴルファーのスイング動作は、モデルの可能な限り単純なスイング動作に極めて近いもの、つまり上方のレバーのみにパワーがかけられている状態となる。

4.次にゴルファーは、モデルがそうであるように、緊張感の整えられたシーケンスのなかで全体の動作を作動させるとともに、スイング動作全体を調和の取れたタイミングにおさめる必要がある。

5.最終的には、ゴルファー個々の構造的特徴に沿った方法で、上記1〜4の動作を再現することを試みながら、モデルのアクションを人体のゴルファーの動作に最もシンプルな方法で置き換えることが必要となる。

ハブの動作をプレーン上に収める

上記のうちの最初の四つについては、特にこれ以上の詳細な説明は必要ないものと思われる。それらはこれまでの章において検証されてきた内容と直接的、直線的につながっている事柄である。

モデルのメカニクスを再現するために、上記のなかでゴルファーが集中しなければならない主要なポイントは、上方のレバーのダウンストロークを開始する際に、スイング全体がプレーンの中に収まるようにしなくてはならないと言うことである。このとき、バックスイングで両肩を後方にターンさせてトップオブバックスイングを迎えたとき、ゴルファーの背中はターゲット方向を向くが、この瞬間にフォワードスイングのパワーと、プレーンがターゲット方向に向いているかどうかの両方が決定される。

ここでゴルファーがその両腕を下方に振り出すための何らかの作用を加える可能性はあるが、主に重力がその行動を終始援助するのであり、結果としてはフォワードスイングをプレーンに収める主要な動作はショルダースイングによって行われ、インパクトに向けての加速につながっていく。

よってモデルの要件に追従することについて言えば、ゴルファーはダウンおよびフォワードスイングのごく初期に、ハブ全体の動作にクラブヘッドを送り込む事だけを考えれば良いことになる。第四章で分析を行ったとおり、ここではハブの動作がプレーンにセットされ、ボールの打撃に向けてスイングのパターンおよびタイミングが調整されていることが必要となる。

このダウンスイングのごく初期の時点では、クラブヘッドがダウンスイングにおいて意図されたプレーンに追従して動くための充分な慣性が獲得出来ていないため、プレーンに導くための必要な動作はショルダーアクションによって補完されなければならない。現実的にはこの動作は、「右腕(および右サイド)が強すぎる」傾向によって早すぎる段階で全体の制御に取って代わってしまう可能性があるため、二本の腕によるスイングのほうが左腕一本のスイングよりも難しくなるのである。

もうずっとプレーンとかハブの話してます。TGMではプレーンとフェース向きとヘッドの操作という具合に三つの要素に分解して考えていますが、SPSの考え方は、

「究極的には完全性の高いプレーンでスイングできれば、あとのことは(パワーとか方向性とか)全部うまくいく」ということを言いたい感じなのかも知れません。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事