‘S.S.S.-by-length’の有効性と正確性

このシンプルな公式を使い続けると、もう一つの奇妙な符合を発見することができる。その一つは、バークデールにおけるプロは、スクラッチハンディキャップのプレイヤーと全く同じようにプレイしていたというとだ。

アメリカで使用されている、コースのパーを計算する一つの方法として、全てのホールにそのホールの長さに基づいたパースコアの端数を割り当てるというものがある。例えば

200ヤードのホールは、端数込みでパー3.2打となる。

300ヤードのホールは、端数込みでパー3.65打となる。

400ヤードのホールは、端数込みでパー4.1打となる。

500ヤードのホールは、端数込みでパー4.57打となる。

このように、全てのホールの距離には端数込みのパー打数が存在する。

ではこれに今回発見された公式を当てはめてみる。200ヤードであれば

0.0044 x 200y +2.35 = 3.23(打)

この数値は割り当て打数である3.20に非常に近い数字である。

またこの公式は全ての距離において有効である。300ヤードでは3.67打、400ヤードでは4.11打、500ヤードでは4.55打となり、まるで魔法のようだ。

それだけではない。英国、スコットランドではスタンダードスクラッチスコア(S.S.S)はコースの総距離によって決定されている。例えば

総距離6,900ヤードのS.S.Sは、73

総距離6,300ヤードのS.S.Sは、70

総距離5,700ヤードのS.S.Sは、67

我々の公式をコース全体に適用させるためには計算式を少し修正する必要がある。つまり18ホールあるので、0.0044x18 x 2.35 = 42.3を足す必要があるのだ。これを6,300ヤードのコースに適用すると

6,300 x 0.0044 + 42.3= 27.7 + 42.3 =70

またしてもズバリの数字が計算できるが、同様に6,900ヤードでは72.65,700ヤードでは67.3となる。

この事実が意味するのは、バークデールにおける平均的なスコアのプロ達がほぼスクラッチの腕前であったことを示しているだけではなく、コースのパー打数、あるいはS.S.Sを決定するにあたり、アメリカにおいても欧州においても、コース距離とスコアの関係をほぼ正確に、それもおそらくは歴史的な経験則から、把握していたということである(このことを確認するためには、もう少しいろいろなコースのトーナメントを分析する必要があるだろうが)

ラフでは4分の1ストローク多くかかる

31:4は、ラフからのロングアプローチに関する観察結果をフェアウェイの結果と比較してまとめたものである。

ここで注目すべき点が二つある。一つは、ラフからのショットは、ショートアプローチの結果と同じ程度、フェアウェイからのショットよりも悪くなると言うこと。二つめは、距離が離れるにつれてラフからのショットの精度が急激に悪化していくということで、200ヤードを超える距離のラフのライからグリーンを捉えることがプロにとっても困難であることを示している。

チームは今回の観測結果から、バークデールのラフからのショットでは、プロがプレイをしたとしても、フェアウェイに比べてショットの不正確生が6065%増加すると結論づけた。結果として、50ヤードから200ヤードの広範なショットにおいて、ラフからのショットは平均して1ホールあたり0.25打スコアを落とす影響を与えるということになった。

もうひとつの要因は、風がロングアプローチの精度に及ぼす影響だった。平均時速12マイルのややアゲインストの風が吹く2番ホールと、ややフォロー風が吹く8番ホールと12番ホールで、距離の違いによる結果を比較した。総論として、極端にカップまでの距離が遠いコースを除き、風はグリーンへのアイアンショットにほとんど影響を与えなかったようである。

従って、140ヤードから200ヤードまでの距離では、アゲインストでプレーした場合(2番ホール)とフォローでプレーした場合(8番ホール)のプロのショット結果はほとんど変わらなかった。これはおそらく2つのバランス効果の結果と思われる。アゲインストでボールをまっすぐ打つ方が難しいのは間違いないが(第25章参照)、一方で、ボールのランが出なくなるため、正確な距離を打つことが簡単になる。

200ヤードを超える、つまり200ヤードから220ヤードの範囲ではアゲインスト下でグリーンに到達することの難しさは、フォロー時よりもフィニッシュ距離の中央値が50%大きくなる(16ヤードに対して23ヤード)。

各クラブの飛距離

各ショット、特にパー3ホールで使用されたクラブに関する情報収集から次の表(31 : 5)が作成され、バークデールのプロが各クラブで示した平均距離が示されている。

ここではアメリカンサイズのボールが使用されたことを覚えておくべきであり、英国サイズに換算するには、表の大きい数字に10ヤードを加え、小さい数字には実質的に何も加えない。特に長いクラブを使った場合の長さは、もちろん、地面の状態に左右され、無風の状態を想定している。

良いアイアンプレーの価値

トップ選手と下位選手のロングアプローチのスタンダードの違いが、大会結果にどこまで影響したのか、これについても計算した。表31 : 6は、3つのショートホールを含む全ホールの比較結果である。

トップ9選手の総合的な優位は明らかである。その差は小さいが、最終的な成績に与える影響はかなり大きい。18人全員が全選手の平均的なドライブを打ち、ショートアプローチとパットも平均的な水準でプレーしたと仮定すると、140ヤードから220ヤードまでのストローク水準の差によって、上位9人が下位9人に対して1ラウンドあたり約1.25ストローク、つまりトーナメント四日間で5ストローク優位に立つことが示された。

チームは次に、アイアンの精度を2倍にすることで(パッティングやショートアプローチはそのままであるとしても)スコアにどの程度の差が出るかを分析した。その結果、トップ9選手と下位9選手の差の4倍以上、つまり、1ラウンドあたり5.5ストローク、トーナメント全体では22ストロークも向上することがわかった。

31:7は、バークデールの各ホールでどのような効果があったかを示している(説明の便宜上、プレーヤーがすべてのドライブを250ヤード打つと仮定している)。

この表の結果からわかることは、バークデールでプレーするクラスのプロにとって、ロングゲームの精度を2倍にすることで得られる改善量は、パッティングの同様の改善(1ラウンドあたり4.2ストローク)よりもさらに大きく、ショートアプローチの同様の改善(1ラウンドあたり1.7ストローク)よりもはるかに大きいということだ。

もちろん、ゲームのいくつかの部門で「同じような」改善と言うとき、私たちはこれらの改善がすべて同じように達成しやすいということを意味しているわけではない。

これに関連することだが、パッティングとは異なり、ロングアイアンのプレーは一般的にはグリーンの凹凸に影響されないことは認知しておくべきだろう。状況判断が正しく行われ、良いインパクトで放たれた振るアイアンショットは、そうではなかったショットに比べて常にカップに近づいたのに対し、完璧に打ち、完璧に狙ったパットは、しばしばグリーンの凹凸によってラインを外れる可能性があり、打ち損じたパットよりも良い結果は得られるとは限らない。

もちろん、短いコースではアイアンプレーの影響は少なくなる。しかし、トップクラスのプロゴルファーのレベルの違いや、トーナメントでの活躍の度合いに大きな差が出るのは、パッティングだけでなく、フルショットのアイアンプレーにあると結論付けても言い過ぎではないだろう。

読者は、考えれば考えるほど、自分が観戦したトーナメントの印象と重なると感じるかもしれない。「ドライビングはショー、パッティングはマネー」という古いことわざは、やはり本質的なところを見逃しているように見える。

ウィークエンド・ゴルファーに役立つ方法

ゴルフを上達させる最も効果的な方法を探している週末ゴルファーにとって、これらの観測結果すべてに役立つ教訓があるかもしれない。時間に余裕があるときは、アイアンショットの練習をし、パッティングの練習は、ほどほどにしておくことだ。アベレージプレイヤーのパッティングはおそらく、それ以外のどんなショットよりも遥かに高い(スクラッチプレイヤーとの差が少ない)水準にある。結局のところ、ほとんどすべてのハイハンディキャップの男性が、スクラッチプレイヤーに遜色ないパットをすることがあるのだ。

しかし、この研究からクラブゴルファーについて過多の結論を導き出そうとするのは危険である。厳密には、ある風と地面のコンディションの中、バークデールでプレーした選ばれたプロのグループにしか当てはまらない。

クラブゴルファー、特により高い目標を目指しているローハンディキャップのゴルファーに役立つのは、この研究が設定したヤード基準である。160ヤードからの5番アイアンのショットを練習するときは、プロの基準であるホールから12ヤード以内(160ヤードの7.5%)にショットの半分を打つことを念頭に置き、40ヤード先のホールに練習球を投げるときは、3ヤード以内に半分を打つことを念頭に置き、パッティンググリーンで練習するときは、3フィートから10打中9打、7フィートから10打中5打、15フィートから10打中2打を目標にすればよい。

バークデール研究の主な特徴のうち、ゴルフをプレーする読者にとって興味のあるものをまとめると以上の結果となった。その綿密さ、科学的方法、そして目撃され詳細に記録された5,000以上のストロークの背後に隠された意味に対する包括的な好奇心によって、この研究はゴルフ分析におけるまったく新しい基準を打ち立てたのである。

寒く、雨も降るなかでひたすらショットの計測をトーナメント三日間にわたって行うことは、ご想像の通りそれほど楽しいものではない。

 

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