ゴルフのティーチングは「アート」である

優れたティーチングプロは、正しいフィーリングを伝えるためには、時として誇張することや、事実ではないことばかりかそれ以前の生徒に伝えたことと正反対の内容を伝えなければならない場合があることを認識している。あるいは同じ生徒に対して、五分前に言ったことと矛盾することさえありうるが、説明もなくこれを行えば、生徒はこのプロに対して不信感を抱くかも知れない。

当然のことながら、これはダウンスイングの初期動作に限った話ではない。スイングのあらゆるポイントにおいて、プレイヤーが現実に行っていることと、本人が「やっている」と感じていることとの間にはギャップが存在している可能性がある。

これら全てのポイントにおいて、一流のティーチングプロは、生徒が正しいフィーリングを得られるようにするための提案方法をいくつも持っており、おそらくそれぞれの生徒個々に対して、この生徒にはどの「言い方」をするのが一番良い結果を生むのかということについても相当のノウハウを持っているはずだ。実際にゴルフのティーチングとは「アート」なのであり、科学的な分析やそのための装置は、そのプロの仕事を助けることは間違いないが、そのプロ本人に取って代わるようなものになることにはまだなりそうにない。

過多なディテールは混乱を招く

インストラクションは、生徒から特定の部位のポジションや動作についてのアドバイスを求められない限り、それらの部位がどのように機能するべきなのかといった特定のディティールではなく、一般的なフィーリングの形で与えられるのが最善であろう。通常、ディティールにこだわったインストラクションは、初心者にとっては良い影響よりも混乱を与えてしまう場合が多いため、アドバイスは一般的な原則を含める程度にとどめておくべきである。

ゴルフスイングの感覚を養うためには、動作の大きな単位を一つのものとして教えることが重要となる。例えば、最初の動きとしてバックスイング全体を教え、後でダウンスイングを追加するといった具合である。スイングをあまりにも細かく分断することは、不必要に複雑さが増すこととなるので避けるべきである。 

最初から強く打つ

しばしば議論されることは、スイングを学ぶ上での一般的なポイントとして、最初から強く打ってあとから正確性を加えるか、穏やかに打つことから始めて徐々にパワーを付加していくかのどちらが正しいかと言うことだ。そのほかの身体の活動のから得られる大半のエビデンスは、最初から強く打つことを支持しており、理論的にもそう考えられる。

スイングにもはや「弾み」が全く感じられないほど遅い(つまりクラブを自在に動かせる)スピードでスイングの練習を行うことが時間の無駄であると言えるのは、筋肉や神経系統が通常のゴルフスイングとは全く異なるスピードで反応しなければならないためである。スイングにある程度弾みが感じられる程度にスピードを弱める度合いが少ない場合でも、システムにおける個々の部位の関係性に変化が生じる。

単純なツーレバーシステムの動作で説明すれば、上部ピボットのターニングフォースが減少すれば、ヒンジに余分にターニングフォースを発生させなければ同じ位置でインパクトを発生させることができないが、これは単にフォースの割合だけではなく、動作のパターンやタイミングにも影響を及ぼす。簡単に言えば、ゆっくりとしたフルスイングというものは、通常のフルスイングのようには機能しない上に、それを練習することはおそらくプレイヤーの次のゲームのタイミングに悪影響を及ぼす可能性すらある。 

より穏やかに打つことで学びたいのであれば、代わりに短い番手でのスイングを使用し、それでも(無理のない範囲で)強く打つようにすることの方が理にかなっていると考えられる。その結果、ピボットにおける複数のフォースの関係はより緊密に維持され、「ゆるみ」がシステムから排除される。フルスイング未満のショットにおいて、例えば10ヤードの転がしのアプローチにおいてさえも、このようにすることでスイングのシステムに「ゆるみ」が発生することを回避できるという一般的な言説は、ある程度信憑性があると考えられる。こうして、基本的なスイングのパターンを同様に保つことで、一つのショットのタイミングを別のショットにも引き継ぐことができるのだ。

初心者のための単純化

 すでに優秀なゴルファーとなったプレイヤーのほとんどは、初心者だったころの恐ろしくフラストレーションの溜まる状態を忘れてしまっていることだろう。このプレイヤーはすでに、クラブを正しく握り。ボールに対して正しくアドレスし、スムースかつエレガントにスイングする段階に達しているからだ。しかしそれでも一定の割合で完全なミスショットを犯すだろう。基本的な欠陥のないプロゴルファーのスイングの正確性をもってしても、そのショットの試みが数回連続して満足できないものであったなら、急激にこみ上げる怒りの感情を抑えられるとは限らない。やがては単純にボールを打撃したいという強迫観念にとらわれて、そのゴルファーは自分のスタイルを完全に忘れ去り、(それが時としてうまく行く場合もあるのだが)野生の本能でボールに立ち向かうようになる。しかしこうしたことは、長期的に見れば彼のゴルファーとしての進歩に壊滅的な悪影響を与える可能性がある。

このような状況で論理的に考えれば、初心者がボールをミスショットすることは完全に明らかである。この初心者は、小さなターゲットをまた非常に小さいクラブヘッドで、これまで見てきた非常に複雑な動きをできる限り速く行いながら、とはつまり何のガイドもなく打撃しなければならない。さらに本章で前述の通り、それは最初から速く、最初から正確なものでなければならない。だとすればどうすればそれを少しでも簡単にできるだろうか?

一つの明確な答えは、より大きなターゲットから始めることである。ゴルフボールのような小さいものではなく、直径約4インチ(10cm)のゴムボールだったらどうだろう。これにより、初心者はそれほど正確さを要求されることなく、全体的な体の動きの完全性を追求することが可能となる。ひとたびこの大型のボールの打ち方をマスターすれば、少しずつボールを小さくしていって、やがて通常のゴルフボールを打てるようになるまで練習をすればいい。単純ではあるが、こうした段階を踏むことで、ゴルフのプレイを学ぶことの初期に発生するフラストレーションを軽減し、長期的に見ればより速い進歩を遂げることが出来るのだ。

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