Table of Contents
シャフトのフィーリングを科学する
シャフトの振動数によるマッチングは、重要かつ実用性もあるため、実際にどのようなセッティングを行うのかについての説明は意義があるかもしれない。シャフトがどのくらい曲がり、どのくらい速く振動するかを決定する基本的な科学式は付録 I に示されている。これらをまとめると、クラブは少なくとも次の 4 つの方法によって振動数を遅くする(つまり、扱った時に よりしなりやすくする)ことができるということになる。
- ヘッドを重くする(質量が 10 % 増加すると振動数は約 4 % 減少する)。
- シャフトを長くする(長さが10%増加すると、振動数は約15%減少する)。
- シャフトの素材を剛性の低い素材にする。
- シャフトの剛性を低くする(外径や肉厚を小さくする)。
方法3と4については、(ボールではなく地面との)衝撃に耐えるためにシャフトを一定の強度にしなければならないという事実によって一方向に制限され、もう一方は過度の空気抵抗を避ける必要性によって制限される。例えば、直径1インチのシャフトは空気抵抗が大きくなり、クラブヘッドを振るスピードを5%以上低下させることになる。
2番アイアンから9番アイアンになるにつれ、ヘッド重量は約9オンスから11オンスに(つまり20%)増加し、グリップポイントからヘッドまでのシャフトの長さは約34.5インチから31インチに(つまり10%)減少する。重量の増加はそれだけで振動数を約8%減少させ、長さの減少はそれだけで振動数を約15%増加させる。両者を合わせると、全体として7%ほど振動数が増加し、結果として打感も硬くなる。
これらの数値は、断面が一定のシャフトを使用した前提である。つまり同じようなシャフトを使用した場合、9番アイアンは2番アイアンよりもかなり硬く感じられることを示唆している。この差は、9番アイアンにもっと柔らかいシャフトを装着することで調整できるはずだ。しかし逆に、現在製造されているほとんどすべてのクラブセットでは、2番アイアンから9番アイアンになるにつれて、シャフトはより柔軟になるのではなく、実質的に硬くなるのである。その結果、9番アイアンは2番アイアンよりずっと硬く感じられる。このような2本のクラブの振動をチェック測定したところ、次のような結果が出た。
9番アイアンは毎秒6.8サイクル、
2番アイアンは毎秒5.7サイクル、
ちなみにドライバーは毎秒4.2サイクルだった。
したがって、このセットでは、有効剛性の尺度として振動数を用いると、9番アイアンは2番アイアンよりも20%近く「硬い」ことになり、セット内のクラブのフィーリングをマッチさせるという観点からは理解に苦しむ。
これには何か理由があるのかもしれないが、明らかではない。この点については、真に革新性を求めるクラブメーカーにとって研究の余地がある可能性を示唆するのみである。
グリップは手首の動きに影響する
前章で見たように、グリップの太さは実際のスイングに影響を与える。しかし、ここでも、グリップの太さ(厚み)がどのクラブでも同じであるべきについては明らかではない。グリップが薄ければ薄いほど、手首の動きは自由になる。短いクラブで手首を自由に動かすために、より薄いグリップを好むプレーヤーもいるかもしれないが、全く逆のプレーヤーもいる。
セットのマッチングを良くするための提案
マッチングについていろいろと述べてきたが、主なポイントの一つは、セット内のクラブのフィーリングを同一にする方法はないが、「スイングフィール」を長いクラブから短いクラブまでスムーズに変化させる方法はたくさんあるということである。論理的な方法の一つは次のようなものであろう:
- クラブのロフト、ライ、長さを現在のものと同じにする。
- ドライバーのヘッド重量を7オンス程度にし、一定のグリップポイント(例えば、シャフトのトップから4インチ)に対して一定の慣性モーメントを与えるように、ヘッド重量をクラブによって変える。そうすると、ロフトの多いクラブは通常より少し重くなる。
- 各クラブがグリップでクランプされた時、ドライバーからウェッジまでのセットでクラブごとに何らかの規則的な方法で変化する振動数を与えるようにシャフトを選択する。手始めに、すべてのクラブで同じ振動数になるようなセットを試してみるのもいいだろう。その場合、一般的には、ロフトのあるクラブは、現在よりもしなりやすくなるだろう。
少なくとも、ここに、今までのどのセットよりも徹底した方法でマッチングされたセットを設計するための作業理論がある。より良いマッチングが、ゴルファーに著しく良い結果をもたらすかどうかは別の問題である。しかし、それは試してみることでしか答えられない。
本当に必要なクラブは何本か?
アイアン9本(2番、3番、4番、5番、6番、7番、8番、9番、ウェッジ)のフルセットの連続するクラブ間の飛距離の差は、プロで約12ヤード、普通のクラブゴルファーでおおよそ9ヤードである。
そのような飛距離の細かいフローを確実にするためには、プロは12ヤード以上の距離を判断し、その範囲内であればどのクラブを使用しても安定してその距離を打つことができなければならない。そしてプロならばこれは可能だろう。
しかし、アベレージからハイハンディキャップのゴルファーは、おそらく距離の判断の精度は落ち、かつどのクラブでも常に9ヤードの範囲の飛距離差を保ってショットを打てるかと言えばそれは難しい。そのため、例えばセットの本数を、アイアンでロフトを等間隔に6本にした場合、2.5番、4番、5.5番、7番、8.5番、ピッチングウェッジのようなセットになるが、このとき番手間のピッチが13〜14ヤードになったからといって、それでゴルフが壊滅的なものになるとは考えづらい。
同じ意味で、ほとんどのゴルファーにとっては、2本のウッドクラブで十分なはずだ。パターを加えると、合計9本のクラブとなり、新品のセットで25ポンドから30ポンドの節約となる。この本数であればキャディバッグもクラブケースのようなもので良く(大きなキャディバッグに比べて5〜25ポンドの節約)、またカートに載せる必要もないかもしれない(7〜10ポンドの節約)。なによりラウンドにかかる時間も短くできるはずだ。
ほぼすべてのハンディキャッププレーヤーが使える特別なクラブ
一般的なゴルファーのセットには、少なくとも1本、厚い、とはいってもヒザまでの高さではないほどラフからできるだけ遠くまでボールを飛ばすために特別に設計されたクラブが含まれている、あるいは追加する必要があるかもしれない。その場合クラブヘッドは重く、コンパクトで、ロフト的には現状の6番アイアン程度で、ヘッド重心は芝の抵抗でフェースが返ってしまう傾向に対応するためにややヒール寄りの設計になっているものが良いだろう。
設計テストの必要性
これらのアイデアのどれがどこまでうまく機能するかは、実験によってしかわからない。この点では、モデルの要件を満たしたドライビングマシーンでの実験が大いに役立つだろう。
プロでさえ、新しいアイデアの効果を事前に確かめることはできない。ゴルフは非常に主観的なゲームであり、あらゆるものに対するプレーヤーの反応も経験によってしかわからない。またその場合でさえ、先入観に左右されることが非常に多い。
1965年にポートマーノックで行われたダンロップマスターズトーナメントの観客を対象とした実験によると、メーカーが供給した「マッチング」されたクラブセットの中に、著しく「外れた」クラブがあることを、ワッグル、あるいはスイングしてみて見抜けるゴルファーはほとんどいなかった。これは、ヘッドの重さ(半オンス違い)でもシャフトの硬さ(2グレード違い)でも同じだった。もちろん、だからといって、何度もラウンドするうちに、バッグの中に1本だけ入っている破天荒なクラブに対して、無意識のうちに不信感を抱くようにならないとは限らない。しかしそれでもワッグルをしただけでそのことに気づくプレイヤーが少数だったことは驚きだ。
現在よりももっと意欲的にマッチしたクラブを作ろうと真剣に試みるなら、メーカーは3つの段階を踏まなければならない:
- 人間のゴルファーと同じようにクラブをスイングできる機械での総合テスト
- プロによる実用テスト
- 一般ゴルファーによるサンプルテスト
このうち、2番目と3番目は、もちろん、適切な組織の問題に過ぎないが、次の章で述べるように、信頼できる結果を得るためには、想像以上の努力と計画が必要である。専門家の意見も一定の価値はあるが、管理された測定に代わるものではない。
しかし、最初の段階では、適切なマシンを製作する必要がある。チームはこれを、クラブをマッチングさせるためだけでなく、クラブを設計するビジネス全体において不可欠なステップだと考えている。それほど複雑でない製品が科学的に設計され、テストされている現代において、可能性のあるゴルフクラブの設計を適切に管理された状態でテストする手段がこの国に存在しないことは、控えめに言っても驚くべきことである。こうした現実に正面から向き合えば、そうした実験を行うための機械はおそらく1,000ポンド以下で製造可能なはずだ。