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第二十九章 トーナメントの分析:パッティング
次に、ゲームにおいて唯一定点観測が可能であるグリーン上のホールに目を向けて、そこで何が起きているかを見てみることにする。
プロにとって、ティーグラウンドからグリーンまでのストロークは、アマチュアよりも、むしろゴルフの多様性に欠ける。しかし、一旦グリーンに乗れば、プロにとっても他のゴルファーにとっても、ゲームはほとんど同じものになる。一般的なアマチュアが、彼のハンディキャップがいくつであろうと、パターを使ってできることはそう多くないことと同様、プロだからといって何か特別なことができるわけではない。
プロがどんなにパッティングに励んでも、実際には、普通のゴルファーができないような方法でボールを転がすことができるわけではない。彼にできることは、肉体的、機械的、精神的に、可能な限り最高のパッティングストロークを生み出し、グリーンを正確に読み、選んだラインで、必要とする強さでボールを精密に打つために、自身をマシーンと化するまで、練習して練習することである。
しかし、それでも、表面の凹凸の影響などもあり、すべてのパットをカップインさせることはできない。パッティングは、実は、プロのゲーム全体が最も脆弱になる部分である。プロがグリーンまでのショットにおいてアマチュアの様に空振りや、完全なミスショットをすることは起きづらいが、グリーン上においてはアマチュアと同じように短いパットを外すことがあり、それは初心者が他のクラブで完全に失敗するのと同じように、そのホールのスコアに大きく打数を加算させる。
どれほど遠くからどれほどの数を打つのか
バークデールでのプロのパッティングを分析する主旨は、もちろん、各グリーンで何パットしたかをチェックすることが目的ではなかった。これは単純な理由で、どれほど良いパッティングを行ったのかは、グリーンに乗せるまでのショットの精度に影響を受けるためだ。例えば、アイアンショットでグリーンを外し、チップを残す回数が多ければ多いほど、1パットでカップインする可能性が高くなる。同様に、ハンディキャップのあるゴルファーは、セカンドショットをほぼミスするため、ショートレンジからグリーンにピッチショットを行うことが多くなりがちで、常にパーオンを狙う完璧なゴルフを目指すプロよりもラウンド中のパット数が少なくなることがある。
つまり、チームが着目したのは、パッティングの打数や正確性ではなく、プロが異なる距離のパットをホールにどれだけ近づけ、そのうちのどれだけの割合でホールアウトさせたか、ということである。
グリーンの大きさ、速さ、正確さ、起伏の判断の難しさ、ホールの位置など、コースの特性によって、1グリーンあたりのパット数はかなり左右される。
それでもチームは「パット数」を記録した。表29:1は、あるプレイヤーがグリーン上でパットするのを1000回観察した場合の結果である。
この結果、1グリーンあたりの平均パット数は1.75弱、1ラウンドあたりの平均パット数は31弱となった。
パット数を数えることが無意味であることは(もちろん、ラウンド中に行われた他のすべての実際のストロークに関連する場合を除く)、次の表(29 : 2)が示しているように、16番ホールの平均パット数が他のホールに比べてかなり少なかったことからもわかる。これは、他のホールでは200ヤードから150ヤードの距離からアプローチしていたのに、16番のパー5では、ほとんどのプレーヤーにとって2打で届く距離であったためとほぼ断定できる。従って、大半のプレーヤーは3打目を50ヤード以下から打っており、ワンパット圏内に寄せることが多かったためだ。
表29 : 3は、プレーヤーが全てのホールで様々な距離からパットをした時の成績で、ホールアウトしたパット数と、パットを外した時はカップにどれだけ近づけたかを示している。
これらの統計を行う上で最初にわかったことは、カップまでの距離とカップインの確率の標準は、計測を行った異なるいくつかのホールの間でほぼ同じであったということである。これはどのグリーンも、他のグリーンにはない特別な難しさがあるわけではないように見えたことから予想通りであった。プロがどのようにパッティングしたかを正確に把握するために、すべてのグリーンの結果を合わせると、表29 : 3に示すような数値になった。
例を挙げれば、読者も理解しやすいだろう。例えば、プロが5ヤードのパットでどれだけの実力を発揮したかを知りたいとする。一番上の「ホールからのスタート距離」の数字の列を見ると、「4-6」(ヤード)というヘッドラインに行き着く。その下の数列は、プロがこの距離からパッティングしたときのパフォーマンスを示している。このように、4~6ヤードの長さのパットが合計152回観察され、そのうち35回(23%)がカップインし、外したパットのうち、87個はカップから0.5ヤード未満、28個は0.5ヤードから1ヤードの間、2個は1ヤードから1.5ヤードの間であった。プロがホールにどれだけ近づけたかではなく、どれだけパットを打ってホールアウトしたかを知りたい場合は、欄外にある数字がその平均値である。全152回のうち、1パットが35回、2パットが115回、3パットが2回で、ホールアウトまで平均1.78パットを要した。
プロはショートパットを外さない
表の中で興味深い点がいくつか目立つ。短いパットを外した数は非常に少なく、3フィート以下からのパットを外した回数は683回中9回だけである。これは、ほとんどのクラブゴルファーよりも、短いパットを決める信頼性の基準が標準的なプライヤーより高いことを表しているのは間違いない。これは、長年「イップス」や「ひっかけ」に悩まされ、3フィートからのパットを3回に2回まで失敗することがあるローハンデのアマチュアにとっては、ほとんど天国のような状態と言って良い。
このホールアウト能力の信頼性がトップクラスのプロに一貫していることは、パットの長さが長くなったときの数値にはっきりと表れている。3フィートから6フィートまでは4回に3回、6フィートから9フィートまではほぼ2回に1回、9フィートから12フィートまででも3回に1回以上の確率でカップインしているのである。
古い論争に光を当てる
12フィートからだけ、プロのカップインの確率は4分の1以下に低下した。この数字は、カップから12フィートから15フィートの間に寄せたアイアンショットで、精密な読みとストロークをもってしても、バーディという報酬を得る可能性がかなり低くなることを強く裏付けている。この点については、アメリカのベテランチャンピオン、ジーン・サラゼンは長い間、「良いストロークが報われるためには、6インチの直径のホールが妥当であり、現在使われている4.25インチの直径は、ゲームが最高の状態で機能するには小さすぎる」と主張してきた。これについては、第21章で紹介した。
もう一つの興味深い点は、パットの長さが10ヤード以上になって初めて、トップクラスのプロが4回に1回は3フィート以上のセカンドパットを残すようになり、12ヤードくらいから初めて10%程度3パットをする可能性が出てくるということである。
パットの確率
表の結果を示すもう一つの方法は、図29 :1のようにパットの長さ別にプロットした「ホールアウトの確率」をグラフの曲線の形で示すことである。
このようなグラフを見ただけで拒絶反応を感じる読者であっても、実際にはそう難しいものではない。下の目盛りに沿って、想定されるパットの長さを見て、そのすぐ上の曲線上の点を見ると、左の目盛りのグラフのその高さで、バークデールの平均的なプロがその距離から1パットでカップインさせる確率を読み取ることができる。グラフ中の○点は、表から直接取り出した実測値を「プロット」しただけで、曲線自体は、それらのわずかな変化をスム−シングしたものである。
例えば、4ヤードのパットの場合、ホールインする確率は0.3強、つまり3回に1回の割合でホールインする確率となる。
2番目のグラフ(図29 : 2)は、1回目のパットを外した後、2回目のパットをどの距離から打ってカップインするかの確率をあらわしたものであり、このグラフも全く同じように読むことができる。例えば、バークデールのプロは4ヤードから平均して1.7パットを必要とする確率になる。